日本医師会の中川俊男会長は11月24日、首相官邸で開かれた全世代型社会保障検討会議(議長:菅義偉首相)に出席し、一定所得以上の後期高齢者の患者負担割合(窓口負担割合)を1割から2割に引き上げることについて「患者一部負担での応能負担(=収入や所得に応じた負担)は限定的にすべき」などとして慎重な議論を求めた。しかし、その後の有識者委員による議論では、住民税負担能力がある後期高齢者や低所得者以外の後期高齢者は2割負担にすべきとの意見が相次ぎ、慎重論を唱えた委員はわずか1人だった。会議はこの問題について年末に取りまとめる最終報告で結論を出す。
医療関係者として日本病院会の相澤孝夫会長とともに会議に出席した中川会長は、後期高齢者の患者負担割合見直しについて「新型コロナ感染症禍での受診控えによる健康への影響が懸念される中、さらなる受診控えを生じさせかねない政策をとり、高齢者に追い打ちをかけるべきではない」とも指摘。
もう一つの医療改革の課題である「200床以上の一般病院への定額負担拡大」については「再診時の定額負担を強化すべき」と訴えた。
相澤会長は定額負担拡大問題にのみ言及し、「200床以上の一般病院の中にも急性期以外の病床を有する病院が相当数ある」として慎重な検討を求めた。
この日の議論では、2割負担とする後期高齢者の所得基準について社会保障審議会医療保険部会に提示されている選択肢をベースに各委員が意見表明し、9人の有識者委員のうち4人が「住民税の負担能力」が認められる者(後期高齢者の上位44%)を2割負担にすべきと主張。3人が、高額療養費制度上の低所得者区分を除く「一般区分」すべて(後期高齢者の上位59%)を2割負担にすべきとした。
菅首相は「与党との調整を十分に図りつつ、取りまとめに向けて具体的な検討を進めてほしい」と指示。同会議は、後期高齢者の患者負担割合見直しについて、改革の施行時期や長期頻回受診患者などへの配慮措置も含め意見を集約し、最終報告に盛り込む予定。