厚生労働省は11月19日の社会保障審議会医療保険部会に、後期高齢者の窓口負担の2割への引き上げで、対象となる所得水準や負担の急増を抑制するための措置(配慮措置)の案を提示した。所得水準は、介護保険の2割負担対象者と同等とした場合や本人に住民税の負担能力がある場合などの5パターンで財政影響などを試算。保険者が懸念する現役世代の負担は470億円から最大で1430億円の削減が期待できると推計した。
厚労省が所得水準の機械的選択肢として提示したのは、①介護保険の2割負担対象者と同等:後期高齢者に占める割合・上位20%、②現在2割負担の70~74歳の平均収入額(約218万円)を上回る水準:上位25%、③平均的な収入で算定した年金額(単身187万円)を上回る水準:上位30%、④本人に課税の対象となる所得がある水準:上位38%、⑤本人に住民税の負担能力が認められる水準:上位44%―の5つのケース。2割負担への引き上げにより、後期高齢者支援金における現役世代の負担は、対象者が最も少ない①で470億円の減少、最も多い⑤では1430億円の減少になると試算している。
厚労省はまた、2割負担化によって外来の窓口負担が倍増する層を対象に、負担の抑制を図る配慮措置の実施も提案した。具体的には2割負担化後の月の窓口負担が9000円を超えた場合(医療費が4万5000円を超えた場合)に、超えた医療費に対する自己負担割合が1割となるように高額療養費の上限額を設定する。この結果、最も2割負担の影響が大きい、医療費が9万円、2割負担にした場合の窓口負担が1万8000円になるケースにおいても、配慮措置の適用で窓口負担は1万3500円となり、本来は9000円であった窓口負担の増額分が4500円に半減する。
厚労省によると、外来患者の約6割が配慮措置の対象になる見込みで、1人当たりの年間窓口負担額は配慮措置なしの平均約11.5万円から約11.1万円へ、0.4万円の抑制効果が期待できるという。ただし、今回の配慮措置はあくまで急激な負担増の抑制を目的としたものであるため、2年間の経過措置とする考えだ。