化膿性関節炎は,化膿菌が関節内に侵入し,増殖する疾患である。本疾患は乳幼児,高齢者,易感染性宿主に発症することが多い。感染経路として,血行性感染,周囲軟部組織や骨組織からの感染の波及,直接感染(関節内注射,手術操作や開放性の外傷など)の3つが挙げられ,血行性感染の頻度が最も高い。診断・治療が遅れた場合には,急速な関節破壊を引き起こし,永続的な関節機能障害をきたす可能性があるため,正確な診断に基づく早期治療が必要な疾患である。
急性に発症した単関節炎もしくは少関節炎では,化膿性関節炎の可能性を考慮して検査を進めていく必要がある。糖尿病,関節リウマチ,副腎皮質ステロイドの服用,アルコール依存,悪性腫瘍,腎機能障害,肝機能障害,低栄養状態,human immunodeficiency virus(HIV)感染,高齢者(80歳以上)が,化膿性関節炎の罹患リスクを上昇させることが知られている。
小児例では若年性特発性関節炎や,その他の感染性関節炎との鑑別が,成人例では痛風・偽痛風などの結晶誘発性関節炎,変形性関節症,関節リウマチとの鑑別が重要である1)。
典型例では,罹患関節の発赤,腫脹,疼痛,熱感および可動域制限を認める。深部関節では発赤,腫脹,熱感が明らかでない場合も多い。安静時や夜間においても疼痛を認め,新生児や乳児の場合では,患肢を動かさない仮性麻痺が特徴的である。発熱,悪寒,倦怠感などの全身症状を呈することもある。罹患部位では,膝関節が最多で,股関節,足関節,肘関節などがそれに続く。
血液生化学検査で,白血球数の増加,好中球分画の増加,赤血球沈降速度(ESR)の遅延,C反応性蛋白(CRP)高値を認める。化膿性関節炎を疑う場合には関節穿刺を施行し,関節液検査(細胞数,細胞分画,結晶検査,グラム染色および細菌培養検査)を行う。化膿性関節炎では関節液は黄白色に混濁し,白血球数の増加を認めることが多い。画像検査では,MRIまたはCTにより,関節腔内の液体貯留を確認する。MRIでは周囲軟部組織の炎症や,骨髄炎合併の有無が評価可能である。
化膿性関節炎と診断した場合には,早急に切開排膿を行うことが基本である。特に乳幼児では,治療開始の遅延により遺残変形を残す危険性が高まるため,速やかな診断と外科的治療が必要である。また,切開排膿とともに起炎菌に感受性のある抗菌薬治療をしっかりと行うことが重要である。抗菌薬の投与期間の目安は6週間くらいであるが,治療効果を判定しながら判断する。
残り1,087文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する