加齢に伴って認められる聴力低下を「老人性難聴」と呼ぶが,加齢変化は30歳を過ぎる頃から始まるとされており,近年は「加齢性難聴」と呼ばれることが多い。地域住民を対象とした調査によると,日常生活に支障をきたす程度の難聴(両耳が中等度以上の難聴)は,70歳代男性の5人に1人,女性の10人に1人の頻度で,高齢になるほど高くなる。
難聴の性状は,両側対称性の高音漸傾型感音難聴が一般的である。標準純音聴力検査の測定値は,低周波数領域は比較的保たれるが,高周波数領域ほど悪く,年齢とともに悪化する。同年代でも男性のほうが,女性に比べて聴力が悪い傾向がある。純音聴力レベルの程度のわりに,語音弁別能が低下している例も多く,音は聞こえても言葉の内容が聞き取れないという症状を示しやすい。騒音下や複数話者の存在下では,音声理解がいっそう困難となる聴覚情報処理機能の低下も併せてみられる。難聴の程度や語音弁別能は,個人差が大きい。
難聴全般を対象とした難聴(聴覚障害)の程度分類に関しては,(500Hz+1000Hz+2000Hz+4000Hz)/4により算出された平均聴力レベルを用いた,日本聴覚医学会による以下の分類がある。
小さな声や騒音下での会話の聞き間違いや聞き取り困難を自覚する。会議などでの聞き取り改善目的では,補聴器の適応となることもある。
普通の大きさの声の会話の聞き間違いや聞き取り困難を自覚する。補聴器のよい適応となる。
非常に大きい声か補聴器を用いないと会話が聞こえない。しかし,聞こえても聞き取りには限界がある。
補聴器でも,聞き取れないことが多い。人工内耳の装用が考慮される。
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