厚生労働白書によると、日本の人口は1967年に1億人を超えたが、2008年の1億2808万人をピークに減少に転じた。そして 2060年には8674万人に減少するとされている。特に地方での人口減少は著しい。また、日本全体では高齢者の割合の増加が問題となっているが、地方では大都市圏と異なる。もはや高齢者の人口も減少に転じていて、既に医療需要の減少が始まっている。
このような状況の中、医療圏に複数存在する同じ機能を持った総合病院の再編統合は避けて通れないことは、地域医療構想調整会議でも意見の一致するところである。しかし、現実にどのように再編統合を進めるかになると、それぞれの病院は設立母体が異なることが多いため、話はさっぱり進まない。このままの状態が続けば、医療機関が生き残りをかけて患者を奪い合うなど、ハードランディングは避けて通れないだろう。
大学医学部の入学定員の増加により、医師数は一貫して増え続けている。そのため、医師の需給バランスに目を向けると早ければ2024年、遅くても2033年には需給が均衡して、それ以降は医師供給数過剰になると推計されている。このような状況でも地方の医師不足感は変わっていない。これは地域偏在と診療科偏在のためである。以下に、医師偏在に関して地方大学の教員として感じていることを述べる。
入学定員における地域枠の設定は、地域偏在に対してある一定の効果はあった。ただし、それは都道府県単位で見た場合である。同じ県内で見た場合は人口減少と相まって、県庁所在地とそれ以外の地域の差はむしろ大きくなっている。一方、ここ数年、診療科偏在は明らかに悪化している。新臨床研修制度や若者の気質の変化などにより、安定したワークライフバランスを重視する医師が増加している。そのため、人の生き死に関わる内科や外科など、いわゆるメジャー系の診療科に従事する医師が減っている。
職業選択の自由との声も聞かれるが、医療は国民のために存在する。フランスなどで見られるような、必要に応じた診療科の定員設定なども考えなければいけない時期になったような気がする。