【進行抑制を目標にNMDA受容体拮抗薬とコリンエステラーゼ阻害薬を組み合わせて使用】
認知症の薬物療法としてわが国で承認されているものは,アルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症に対するものである。アルツハイマー型認知症は緩徐進行性の記憶障害を特徴とし,進行すると幻覚・妄想や徘徊といった周辺症状を呈することがある。レビー小体型認知症は認知機能低下,パーキンソニズム,幻視,レム睡眠行動障害などを特徴とする認知症である。
以前はアルツハイマー型認知症の認知機能障害に対してコリンエステラーゼ阻害薬であるドネペジルのみが承認されていたが,2011年に同じくコリンエステラーゼ阻害薬であるガランタミンとリバスチグミン,NMDA受容体拮抗薬であるメマンチンが承認され,薬物療法の選択肢は広がったと言える。レビー小体型認知症に対しては14年にコリンエステラーゼ阻害薬であるドネペジルのみが承認され使用可能となった。
アルツハイマー型認知症,レビー小体型認知症に対してコリンエステラーゼ阻害薬とNMDA受容体拮抗薬の両者を使用し,認知機能障害の進行を抑制することが目標である。副作用として,コリンエステラーゼ阻害薬は食欲不振,悪心・嘔吐,下痢など消化器症状が多く,NMDA受容体拮抗薬ではめまいなどが多いとされている。
【解説】
山内 繁,金沢徹文* 大阪医科大学神経精神医学 *教授