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巨星 墜つ、されど、新たな希望の陽は 昇り、輝き続ける[炉辺閑話]

No.5045 (2021年01月02日発行) P.58

海渡裕郎 (海渡醫院院長)

登録日: 2021-01-02

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巨星にはもちろんいろいろあります。私にとっては臨床における綺羅星たる恩師K先生のことですが。

師は心優しく、またきわめて優れた臨床の星であり、幸運にも私は師の元で臨床を学ぶ場を与えられました。

師は常に率先して真の臨床医とは何か、それを優しい物腰で示されました。悩み、苦しみ、耐え続ける患者様に四六時中関わり思い続けること、また、病める方に合わせてその愛の手の力の込め方を勘案しながら差し出し、導き続けることだという内容を、直接に語ることはなくても皆に体でお教え続けて下さいました。師と病を患った方との何気ない会話の中には、師の常に温かな、どんな状況であろうとも人間であるということの素晴らしさを頷かせる優しい抱擁心が溢れ出ていました。

師の時代に激変がありました。悲報が昨年の年初に走りました。さらに、今度は私達大学の関係者間の一大事ではなく世界を震撼させるコロナ禍が出現し、これが全世界を駆け回り地球を暗く、重く、辛いベールで覆いつくし私達の心に恐怖と無力と抑うつを植え付けました。

最前線で日夜懸命に戦い続ける医療者へのバッシングも出現しました。悲しさとも辛さとも言えない複雑な感情が前線でない一介の医師にも生じ、もし天空に輝く恩師がこの光景を御覧になられたらどのような御気持ちだろうかと想うのでした。

師の病める方への説明法は、どんなに絶望的な苦しい状況であっても些細な弱い、淡い希望の光はあり、それらの光線の入口を塞がない御言葉を発せられることでありました。暗闇に見えたとしても目を大きく見開けばやがて光は見えてくる、それは、うっすらかも知れないが光はこちらにやってくるものだという御話方でした。

激動の幕開けから年が変わりなお継続する困難はあっても、恩師の語った内容は、コロナパンデミック治癒への曙、それは輝度を増しながら大きな希望の光、やがて収束光線となり昇りつめ、輝き、地球を照らす新年光に成るのだと思わせてくれるのでした。

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