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後天性色素細胞母斑(ほくろ)[私の治療]

No.5044 (2020年12月26日発行) P.39

佐藤さゆり (札幌医科大学医学部皮膚科学講座)

宇原 久 (札幌医科大学医学部皮膚科学講座教授)

登録日: 2020-12-25

最終更新日: 2020-12-23

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  • 色素細胞母斑は色素細胞からなる母斑(黒あざ)を指す。先天性と後天性にわかれ,先天性は生下時からある色素細胞母斑を指す。しかし生後1カ月~2歳頃までの間に出現してくる病変も,生下時に認められた“真の先天性色素性母斑”に似た臨床および組織学的所見を呈することから真の先天性色素性母斑と同等の扱いをすることが多い。後天性色素細胞母斑は小児期以降に発生した色素細胞母斑であり,先天性に比べて小型であり,6~7mmを超えて増大するものは少ない。組織学的には表皮下層に発生し,徐々に真皮内に浸潤し,その後表皮内病変が消失する。中年までは数が増えていくがその後減少する。
    後天性色素細胞母斑にはいくつかのタイプがあり,主にMiescher型母斑(半球状に隆起し,表面が平坦,体幹に好発),Unna型母斑(有茎性で表面が乳頭状,頭頸部に好発),Clark母斑(中央が濃く周囲が薄い色の斑で,わずかに隆起,体幹四肢に好発,6mmを超えることがある),Spitz母斑(若年者に好発する紅色から黒色の病変)にわけられる。Spitz母斑は組織学的には細胞異形が認められ,メラノーマとの鑑別が問題となることが多い。臨床的に黒色を呈し,組織学的に紡錘形細胞からなるものをReed母斑と呼ぶ。Halo母斑は周囲に白斑を伴うもので,メラノサイトに対する自己免疫現象であり,メラノーマにも認められることがある。色素細胞母斑が爪に発症した場合は黒い線となる。後天性色素細胞母斑は悪性黒色腫,基底細胞癌,脂漏性角化症などとの鑑別が必要になる。

    ▶診断のポイント

    ①病変に気づいた時期,②受診前1年以内のサイズと形の変化,③受診時の病変のサイズ,が診断に有用である。特に成人以後の発症で,半年以内に急に増大し,サイズが7mmを超えている場合は皮膚科医の診察を勧める。ただし,小児期の後天性色素細胞母斑は7mm以上の大型である場合が少なくない。鉛筆の後断面を当ててはみ出せば7~7.5mmを超えている。日本人の悪性黒色腫患者のほとんどは成人であるが,小児期から存在した黒いシミが急に増大や隆起を始め,悪性黒色腫と診断される例が5%ほど存在する。このような症例の多くは掌蹠爪以外の被髪頭部,体幹四肢に好発し,色白の20~40歳代の女性に多い。

    爪の後天性色素細胞母斑と悪性黒色腫の鑑別ポイントは,悪性黒色腫では病変は1指(趾)に限局し,爪の基部の幅が先端より太い逆三角形(数カ月以内の増大を示唆する)を呈し,爪周囲の皮膚にも色の染み出しを伴うことが多い。ただし,乳幼児の爪の色素細胞母斑は悪性黒色腫と似た臨床病理所見をとることが少なくなく,基本的には観血的検査を行わずに慎重にフォローする。

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