【質問者】
吉川一郎 自治医科大学とちぎ子ども医療センター 小児整形外科教授
【装具治療は約20〜25°を目安に症例ごとに検討して開始すべきである】
AISに対して高いエビデンスを有する治療法は,装具と手術治療の2つです1)。その他,運動療法も治療上,有用であると言われていますが,そのエビデンスにはいまだ結論が出ていません。側弯症治療で世界の最先端を走る米国側弯症学会(Scoliosis Research Society:SRS)が推奨するAISに対する装具治療の適応は,①10歳以上,②Risser sign 0〜2,③Cobb角25〜40°,④初経前あるいは,初経から1年未満,です2)。しかし,装具治療の適応は,一律に決定することが難しく,症例ごとに検討されるべきというのが私の持論です。第二次性徴期にある側弯の進行・悪化をいかにして食い止め,手術治療を回避するかが装具治療の主眼です。
個人的には,胸椎カーブでは25°,胸腰椎および腰椎カーブでは20°という数値を装具治療開始の目安にしています。もちろん,初経の有無,初経からの経過期間も重要です。初経前であれば,20°未満でも要注意です。しかし,直ちに装具治療を始めず,経過観察期間を短くし,約3カ月ごとに外来で経過を観察します(一般的なAISでは,6カ月ごとの観察です)。短期での経過観察中,進行するようであれば,装具治療を開始します。Risser signに関しても,2未満にこだわらず,30°を超えるような側弯であれば,3未満を条件に装具治療を行います。近位胸椎カーブに有効な装具は,体軸上の牽引力付加が可能なミルウォーキー装具以外にありません。しかし,整容上の問題で,その使用は現実問題として不可能です。主胸椎カーブなどのコントロールに傾注すべきと考えます。
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