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筋クランプ(こむら返り)[私の治療]

No.5053 (2021年02月27日発行) P.44

石井一弘 (筑波大学医学医療系神経内科学准教授)

登録日: 2021-02-28

最終更新日: 2021-02-24

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  • 筋クランプ(こむら返り)は突然に生じる,不随意で有痛性の筋収縮で腓腹筋に最も多くみられる。健常人の90%以上が経験している。最も頻繁に認められる生理的なこむら返りは,夜間睡眠時に腓腹筋に非対称性に生ずる激烈な痛みを伴う筋収縮である。健常者でも過度な運動,脱水や熱中症などが誘因になることがある。また,妊婦,高齢者,透析患者や肝硬変患者で,特に夜間に筋クランプが起こりやすい。

    ▶診断のポイント

    激痛を伴う筋収縮と硬化で安静時または運動時に起き,数分程度で改善する。腓腹筋に起こる場合,筋肉の最も短縮したときに起こり,随意的に短縮させることでも誘発される。疼痛が残ることが多い。攣縮している筋肉を伸展させて発作を止めることができる。(激しい)運動中にのみ起こる場合,何時間も続く場合や激痛でない場合は,他の疾患や他の疾患に関連した筋痙攣類似症状を考える。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    非薬物療法としての対症療法が主で,まず,筋クランプの解除方法を患者に指導し,次に誘因を聴取し,それを避けることを指示する。筋クランプの解除方法は,筋クランプを生じている筋を伸展させることで,速やかに回復させることが可能である。筋クランプの予防法として,散歩,ストレッチ,マッサージ,局所の保温が推奨される。ストレッチは,アキレス腱から下腿後面を伸ばすよう指導し,1回10~30秒を数回,それを1日2~4回実施する。筋クランプが頻回に起こり,睡眠障害やQOLの低下をまねいている場合は内服治療が必要となる。

    健常者では基本的に運動やストレッチを指導する。頻度が高い場合は芍薬甘草湯,ビタミンB群剤やマグネシウム製剤を使用する。マグネシウム製剤は酸化マグネシウムでも代用可能である。高齢者では,夜間の下肢筋クランプが問題になる。就眠前の芍薬甘草湯を試みる。ビタミンB群剤やマグネシウム製剤も有効な場合があるが,高マグネシウム血症による不整脈に注意する。妊婦では下腿の静脈還流が悪くなるために筋クランプが起こりやすい。児への影響が少ないマグネシウム製剤やビタミンB群剤が推奨される。慢性腎不全や透析患者にみられる筋クランプは,透析中や透析後に起こることが多く,芍薬甘草湯が有用である。改善が認められないときは,メキシレチン,ガバペンチン,カルバマゼピンを使用する場合もある。慢性肝炎,肝硬変患者では夜間の筋クランプがみられ,芍薬甘草湯が有効である。また,タウリンは保険適用外ではあるが,高いエビデンスで効果が証明されており,使用を試みてもよい。ガバペンチン,カルシウム拮抗薬(ジルチアゼム),メキシレチン,カルバマゼピンを使用する場合もある。

    神経筋疾患など筋クランプの原因疾患がある場合や,糖尿病や慢性腎不全,肝硬変など基礎疾患を有する場合は,原疾患の治療も同時に行う。薬剤性筋クランプが疑われる場合は原因薬剤を減量・中止する。原因薬剤としてスタチン,降圧薬(利尿薬,β遮断薬など),抗精神病薬などがある。

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