転移性肝腫瘍は,原発となるがん種により治療方針が大きく異なる。基本的には全身病治療として抗癌剤治療がその中心となるが,切除手術や動脈塞栓治療など肝腫瘍に対する局所治療が,延命ないし治癒につながる疾患もあり,治療方針の決定には,外科,腫瘍内科,放射線科など集学的アプローチが必須である。本稿では,一般的に外科切除適応のある大腸癌の肝転移,膵,消化管神経内分泌腫瘍(NET)について,その(外科)治療のポイントを述べる。
①転移性腫瘍と原発肝腫瘍は,CT,MRIなどの画像所見とともに過去のがん既往歴や内視鏡所見,腫瘍マーカーなどの血液検査所見をもとに鑑別することになるが,臨床診断が明らかであれば,生検による肝腫瘍の組織診断は必須ではない。一方,肝転移の診断が,原発巣または肝腫瘍の切除適応を決定するような場合には,針生検を行うべきである。
②転移性肝腫瘍の治療選択前の評価として,肝転移の個数,局在,肝外転移の有無,肝代謝機能が重要となる。微小な肝転移病変の検出には造影CTだけでは不十分で,EOB・プリモビスト®造影MRIの併用が望ましい。肝外病変の除外にはPETが有効である。
大腸癌は,肝転移切除により治癒が期待できる1)代表的な疾患であり,積極的に外科切除を考慮すべきである。近年の分子標的治療薬と抗癌剤治療の進歩に伴い,大腸癌肝転移の切除適応は以前に比べて格段に広がったが,切除の適否は転移の個数や大きさといった客観的な基準で決まるわけではなく,治療前に肝臓外科医が切除可能性を評価することが望ましい。
当院では,肝転移の個数,大きさにかかわらず,すべての肝転移巣を切除するとして,十分な肝予備能と残肝容量が期待できる症例を切除可能と定義している。切除可能肝転移に対する術前化学療法に対する有効性はいまだ確立されていないが,筆者らは特に再発リスクが高い症例〔個数4個以上,最大腫瘍径5cm超,切除可能な肝外転移(肺転移など)〕に対しては,原則抗癌剤による前治療を行った後の切除を推奨しており,この前治療後に肝切除を行ったハイリスク群患者の5年生存率は6割を超える2)。
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