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変形性肩関節症[私の治療]

No.5055 (2021年03月13日発行) P.35

池上博泰 (東邦大学医学部整形外科学講座教授)

登録日: 2021-03-13

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  • 肩関節は肩甲骨と上腕骨頭より構成されている。このため,肩甲上腕関節とも呼ばれ,この肩甲上腕関節の軟骨が変性し破壊が生じている状態が,変形性肩関節症(OA)である。原因によって,一次性のもの(明らかな原因が考えられないもの)と二次性のもの(原因があるもの)とにわけられる。

    ▶診断のポイント

    一次性OAは,通常高齢者に発生するが,他の部位の変形性関節症(変形性膝関節症,変形性股関節症)に比べて,その発生頻度は低い。この理由としては膝・股関節などの荷重関節に比べ,肩関節は非荷重関節なので関節面に負担がかかりにくいことが挙げられる。このことは軟骨変性が進んでも症状が比較的軽い理由とも考えられている。また,発生頻度には人種,地域による差もあり,日本人の発生率は欧米人に比べて低く,人種による遺伝因子や生活習慣・食生活の違いなどの環境因子の関与も推測されている。

    二次性OAの原因は,外傷性と非外傷性にわけられ,前者は骨折・脱臼などによって関節の不適合が生じること,後者は炎症性疾患や各種の要因によって関節軟骨が損傷されることが主因となる。炎症性疾患としては,関節リウマチ,感染性関節炎,偽痛風などの結晶誘発性関節炎などがある。その他の関節軟骨を損傷する要因としては,腱板広範囲断裂,血友病,骨軟骨腫症,神経病性関節症などがある。

    腱板断裂関節症(cuff tear arthropathy)1)は,腱板広範囲断裂例の一部に発生する二次性変形性関節症で,診断にはHamada分類2)がよく用いられる。

    【症状】

    疼痛と可動域制限が主で,時に関節水腫もみられる。疼痛は,初め運動時痛であるが病期が進むと夜間痛や自発痛を訴える。特に夜間痛が生じてくると,睡眠障害を生じて日常生活に支障をきたすこととなる。可動域制限には特異的な徴候はないが,運動時の軋轢音や病期が進むと筋萎縮を生じてくることもある。

    【検査所見】

    単純X線画像では,肩甲上腕関節裂隙の狭小化,上腕骨頭または肩甲骨関節窩の骨硬化,骨棘形成,軟骨下骨骨嚢腫を認める。腱板断裂関節症では,上腕骨頭は上方化して,大結節は円形化する。CT画像では,単純X線画像よりも骨硬化・骨棘形成・骨嚢腫の部位や程度がより明瞭に描出され,病期が進んだ際の上腕骨頭の後方亜脱臼も容易に描出される。MRIは,骨形態よりも腱板断裂の有無や筋萎縮の程度などの軟部組織の状態や炎症性変化の把握により有用である。肩甲上腕関節内の関節液貯留や肩峰下滑液包内の滑液貯留を様々な程度で認める。上腕骨頭・肩甲骨関節窩の骨硬化部はT1,T2強調像で低信号領域を呈する。

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