「僕はこのままプレーします」。彼は迷わず答えた。
彼は高校3年生、静岡の進学校のラグビー部キャプテン、そしてその4月に肩関節外傷性脱臼、関節窩面骨折(図1)を受傷した。今後反復性脱臼、不安定症に移行することは明白。「5カ月あれば手術から復帰できる、県予選に間に合う」。私は説得したが、彼は「チームづくりとして、ずっと主将として関わりたい」。手術を選ばず、痛みを堪えてプレーすることを決意して、静岡に帰宅した。
彼との出会いは、中学2年時に遡る。学校の“将来なりたい職業”体験実習として、学校のラグビーコーチからスポーツドクターの職場見学希望として紹介された。彼は1人で聖路加を訪れ、許可を取り手術見学、そして数名の外来診察を見学した。その後、「医師になり、スポーツに貢献したいと決意した」と連絡を受けた。以後、彼の活躍を祈りながら折に触れて連絡を取り合った。
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