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肝細胞癌における薬物療法の進歩と外科的治療の位置づけは?

No.5064 (2021年05月15日発行) P.45

波多野悦朗 (兵庫医科大学肝胆膵外科主任教授)

市田晃彦 (東京大学医学部附属病院 肝胆膵外科・人工臓器移植外科)

長谷川 潔 (東京大学医学部附属病院 肝胆膵外科・人工臓器移植外科教授)

登録日: 2021-05-17

最終更新日: 2021-05-11

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  • 切除不能進行肝細胞癌に対して,2020年9月に抗PD-L1抗体アテゾリズマブとベバシズマブの併用療法が承認されました。複数の分子標的薬と免疫チェックポイント阻害薬が日常診療に導入されましたが,肝細胞癌における薬物療法の進歩とともに,外科的治療の位置づけは変化するのでしょうか。また,手術適応は拡大するのでしょうか,縮小するのでしょうか。
    東京大学医学部附属病院・長谷川 潔先生のご教示をお願いします。

    【質問者】

    波多野悦朗 兵庫医科大学肝胆膵外科主任教授


    【回答】

     【新規薬物療法を組み合わせることで切除適応の拡大や成績改善が期待される】

    「肝癌診療ガイドライン2017年版補訂版」1)ではChild-Pugh分類がAもしくはBで肝外転移がなく,個数が3個以下の場合には肝細胞癌に対する外科的切除が推奨されています。一方で,脈管侵襲・肝外病変などの予後不良因子を有する症例や治癒切除が困難な症例の切除後成績は不良であることが知られています。このように,たとえ切除できたとしても切除後の予後が不良である症例や技術的切除不能症例では,何らかの非外科的治療と外科的切除を組み合わせた集学的治療による治療成績の向上が模索されてきました。

    しかし,従来行われてきた肝動脈塞栓療法・肝動脈化学塞栓療法・肝動注療法やソラフェニブを用いた前治療による予後改善効果は定まった見解が得られていません。技術的切除不能症例にこれらの治療を行った後,切除を行ったconversion surgeryの報告数も限られており,定まった治療とは言えないのが現状です。

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