1 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)とは?
①日本消化器病学会・日本肝臓学会合同の診療ガイドラインにおいて,NAFLDの定義がなされている。
②わが国の成人の約25%がNAFLDである。
③NAFLDは,主にメタボリックシンドロームに関連する諸因子とともに,組織診断あるいは画像診断にて脂肪肝を認めた病態である。アルコール性肝障害,ウイルス性肝疾患,薬物性肝障害など,他の肝疾患は除外する。
2 NAFLとNASHの違い
①NAFLDは,病態がほとんど進行しない非アルコール性脂肪肝(NAFL,以前の単純性脂肪肝)と,進行性で肝硬変や肝癌の発症母地にもなる非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に分類される。
②NASHは,病理診断による脂肪変性,炎症,肝細胞傷害(風船様変性)が特徴である。
③NAFLとNASHは,相互移行がある。NAFLの一部は,進行速度は遅いが線維化が進行することもある。
3 NAFLDの予後を規定する病理学的所見は何か?
・肝線維化が全死亡率,肝疾患死亡率に強く関連するため,肝線維化の進展状態を把握することを推奨する。
4 肝線維化のあるNAFLDの拾い上げ方法とは?
・今回の改訂ガイドラインで,肝線維化NAFLDの効率的な拾い上げ方法に関して,一次と二次スクリーニングに関するフローチャートを提案した。
・人間ドックで脂肪肝を指摘された場合,および代謝性疾患で通院中の患者で肝機能障害を認めた場合,線維化マーカー,FIB-4 indexのスコアリングシステム,血小板数などで肝臓の線維化の可能性を検索する。
・次にFIB-4 index 1.3以上またはNAFLD fibrosis score−1.455以上あれば,肝生検またはエラストグラフィ(FibroScan®,MRエラストグラフィ)を考慮する。特にFIB-4 index 2.67以上の場合は,線維化が強く疑われるため,線維化ステージを把握すべきである。
5 NAFLDにおけるHCCスクリーニングとは?
・肝硬変(または,ほぼ同等の肝硬度を認めた場合)は,半年おきの腹部超音波検査,腫瘍マーカーにより,HCCのスクリーニングを行うことを推奨する。
・男性では線維化ステージF2以上,女性ではF3以上でHCC発癌の可能性がある。
6 まとめ
2021年度は,改訂ガイドラインを広く理解・周知してもらい,NAFLDの肝線維化の重要性を認識し,線維化・HCCのスクリーニングが効率的に行われ,有効な治療に繋がることを望む。
伝えたいこと…
わが国には約2300万人という多数のNAFLD患者がおり,肝臓の線維化が生命予後に関連する。すべてのNAFLDを精査・治療はできないので,脂肪肝を診た場合には肝線維化の有無に注意し,肝線維化群を拾い上げるべきである。