急性胆管炎は,胆管の閉塞・狭窄などによる胆汁うっ滞をベースに腸内細菌が門脈行性あるいは消化管から逆行性に感染して起こる病態である。原因は,総胆管結石が最も多く,そのほか悪性腫瘍や良性疾患に伴う胆管狭窄などがある。悪性胆管閉塞(膵癌・胆道癌などによる)に対する胆管ステント留置後の閉塞や,胆管消化管吻合術後の吻合部狭窄などを原因とする胆管炎もある。
腹痛,発熱,黄疸(Charcotの三徴)以外に,悪心,嘔吐などがある。重症化するとショック(血圧低下),意識障害が加わる(Reynoldsの五徴)。
血液検査で肝胆道系酵素の上昇,総/直接ビリルビンの上昇,炎症反応(白血球増多,CRP上昇)などがみられる。原因検索のため腹部超音波検査(US)やCTで,胆管拡張,結石・腫瘍の有無などを確認する。また,緊急で実施可能であれば,MRI(MRCP)も胆管の閉塞機転確認に有用である。総胆管結石が疑われるが,US・CT・(MRI)ではっきりしない場合には,超音波内視鏡検査(EUS)が有用である(ただし,EUSのエキスパートがいる施設に限る)。
急性胆管炎は,病状の進行が早く,重症化しやすいため,原因検索と重症度判定を迅速に進めるとともに,速やかに初期治療(絶食・補液・抗菌薬投与)を開始する。また,起炎菌同定のため抗菌薬投与前に血液培養を行う。
「TG13/18急性胆管炎重症度判定基準」を用いて判定する。循環障害(ドーパミン≧5μg/kg/分またはノルアドレナリンの使用),中枢神経障害(意識障害),呼吸機能障害(PaO2/FiO2比<300),腎機能障害(乏尿または Cr>2.0mg/dL),肝機能障害(PT-INR>1.5),血液凝固異常(血小板<10万/mm3)のいずれかを認める場合は重症,白血球>1万2000 または<4000,体温39℃以上,75歳以上,総ビリルビン5mg/dL以上,アルブミン<健常値下限×0.73g/dLのいずれか2つ以上を満たす場合は中等症である。
中等症以上の場合,または軽症でも初期治療に不応の場合は,早期あるいは緊急の胆管ドレナージが必要である。対応困難な場合は,専門施設への搬送を考慮する。
内視鏡的経乳頭的ドレナージが第一選択である。胆汁培養も併せて行う。内瘻(内視鏡的胆道ステンティング)とするか,外瘻(内視鏡的経鼻胆道ドレナージ)とするかは,患者の状態によって判断する。内視鏡的胆道ドレナージが不成功の場合は,経皮経肝胆管ドレナージ(PTBD),あるいはEUS下ドレナージを考慮する。
総胆管結石が原因の場合は,胆管炎が中等症以下であれば内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)を行い,結石を除去する。遺残結石が疑われない場合にはドレナージは留置しない。胆管炎が重症の場合も,短時間で結石除去を行うことができる術者であれば,結石を一期的に除去後,胆道ドレナージを留置する。
ドレナージ施行前には,抗血栓薬内服の有無,出血傾向,上部消化管手術の既往・再建術式について確認する。
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