株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

公的医療費抑制と医療の営利化は「避けられない現実」か? [深層を読む・真相を解く(37)]

No.4721 (2014年10月18日発行) P.16

二木 立 (日本福祉大学学長)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-03-23

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • next
  • 社会保障国際フォーラムでの報告

    私は、本年9月13〜14日に中国・北京市で開催された第10回社会保障国際フォーラムで、「2000年以降の日本の医療・社会保障改革─政権交代で医療政策は大きく変わるか?」をテーマに報告を行い、大要、以下のように述べました。

    ①2001〜2006年の小泉政権時代には公的医療費の厳しい抑制と医療分野への部分的市場原理導入が行われたが、「抜本改革」は行われなかった。②その後2009年と2012年に二度政権交代が生じたが、やはり医療制度の「抜本改革」は行われなかった。③医療制度の明らかな政策転換(「社会保障の機能強化」)は、2009年の第1回の政権交代(民主党政権成立)直前の2008〜2009年に、福田・麻生自公連立政権の下で行われ、それが初期の民主党政権でも踏襲された。④2012年12月の第2回政権交代で成立した第二次安倍政権は大枠では民主党政権時代の医療政策を踏襲しているが、政権が長引くにつれて、小泉政権時代の改革との類似が強まっている。

    以上の分析を踏まえて、私は報告の「おわりに」で、今後の日本の医療改革について、次のようなやや悲観的見通しを述べました。「私は、日本では今後、公的医療費・社会保障費の抑制政策が強まるが、それでも国民皆保険制度の大枠が維持されることは確実だと判断しています。他面、[中略]今後、国民皆保険制度の周辺部分で営利化・産業化が徐々に進む可能性が大きいと思います。しかも、それと公的医療費・社会保障費抑制の強化が『相乗効果』を発揮した場合には、小泉政権による過度な医療費抑制により社会問題化した『医療危機』・『医療荒廃』が再燃する可能性があると危惧しています」(『文化連情報』本年11月号と「二木立の医療経済・政策学関連ニューズレター」124号掲載予定の同名論文参照:www.inhcc.org/jp/research/news/niki/)。

    国際フォーラム終了後、ある日本人研究者から、この報告に対して次の質問を受けました。「今後の、日本における公的医療費抑制、国民皆保険制度の周辺部分での営利化・産業化の進行というベクトルの変化は避けられない現実であると理解すべきでしょうか?」以下は、それに対する私の回答です。結論を先に言えば、この変化は決して必然ではなく、「未来はまだ決まっていない」と言えます。

    残り2,387文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    関連物件情報

    もっと見る

    page top