1 認知機能検査とは?
認知機能は,記憶・理解・判断・論理・計算などの様々な知的機能を包括的に指します。したがって,いずれかの認知機能を評価するものでも,すべて認知機能検査と呼ぶことができます。
医学では認知機能検査というと,認知症の診断や評価に用いる認知症検査を指すことが一般的ですから,本稿では「認知機能検査は,認知症の有無とその重症度を調べる検査」と定義することにします。
2 認知機能検査にはどのようなものがありますか?
医療現場で用いられる代表的な検査には,①Montreal Cognitive Assessment(MoCA),②長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R),③Mini-Mental State Examination(MMSE),があります。
アルツハイマー病の認知機能検査としては,④Alzheimer’s Disease Assessment Scale Cognitive Subscale(ADAS-Cog),が優れているとされ,アルツハイマー病薬剤の開発治験などで用いられることがあります。
身近な社会検査に,⑤高齢者の運転免許更新時の認知機能検査,があります。
3 認知機能検査を行う目的は何ですか?
「認知症の早期発見(スクリーニング)」と「認知症の重症度評価」です。
4 認知機能検査を行うのはどんな時ですか?
認知症の早期発見が目的ですから,認知症が疑われたら実施します。
一般に,認知症ではその病識が失われるため,自発的に検査を受けるために受診することはむしろ稀です。そのため,ちょっとした変化に注意して,必要に応じて検査を勧めます。
たとえば加療中の糖尿病の悪化原因が,薬の飲み忘れによる場合があります。
加齢は認知症のリスクですから,高齢者では症状がなくても定期的に行うことが望まれます。
5 認知機能検査は誰が行いますか?
特に決められた資格はありません(MoCAではトレーニングを受けることが推奨されていて,受講すると“認定”されます)。
ポイントは,検査者がその方の状態を最もよく把握できるということです。
ひとつ(複数でもかまいません)の検査を選んで,対面で実施します。
広く実施するためには被検者,検査者の負担を考慮し,10~20分程度で終わるものが良いでしょう。
6 判定
スケールの常として合計点で判定することが多いのですが,できれば個々の問題に対する正誤,さらには回答時の様子も確認することが大切です。
伝えたいこと…
・認知機能検査はあくまでスクリーニングであって,認知症の診断を決めるものではありません。
・得点だけでなく,検査実施時の様子が参考になります。
・経過観察にも有用です。検査の点数にも意義がありますが,その経時的変化は非常に重要なデータになります。