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急性腎炎症候群[私の治療]

No.5068 (2021年06月12日発行) P.47

小椋雅夫 (国立成育医療研究センター腎臓・リウマチ・膠原病科医長)

登録日: 2021-06-15

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  • 急性腎炎症候群は,WHOが糸球体疾患を病態(病名・疾患名ではない)で分類した1つのカテゴリーであり,急激に発症する肉眼的あるいは顕微鏡的血尿,蛋白尿,高血圧(ナトリウムと水の貯留),糸球体濾過率の低下などを特徴とする症候群である。慢性糸球体腎炎の急性増悪なども含まれるが,実際の臨床の現場では「急性腎炎症候群」を呈する疾患は大部分が「急性糸球体腎炎」であり,混同せず理解しておきたい。

    ▶診断のポイント

    急性腎炎症候群を呈する代表的疾患である,溶連菌感染後急性糸球体腎炎について述べる。溶連菌による急性咽頭炎後1~2週間(皮膚感染の場合は3~6週間)を経て,急性腎炎症候群(血尿・乏尿・浮腫・高血圧)を呈する。検査所見としては,尿検査で血尿・蛋白尿を認め,血液検査で腎機能障害・低補体血症(特にC3が低下)を認める。乏尿となるため体内水分量は増加し,浮腫や血管内水分の増加が認められる(BNPやhANPの増加,胸部X線での心胸郭比の増大など)。基本的には自然に治るため,支持療法が主体となる。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    急性糸球体腎炎の発症時,溶連菌感染が持続している場合に抗菌薬治療を行うべきかどうかは議論の余地がある。しかし,感染に伴う免疫反応により免疫複合体が糸球体に沈着し腎炎を起こすため,一般的には抗菌薬治療が行われている。

    急性糸球体腎炎については,自然回復が期待できるため対症療法が中心である。水分・浮腫・血圧管理,電解質管理,アシドーシス管理などが重要で,尿量が不十分で内科的な管理(食事制限や投薬による治療)が困難となった場合は,遅滞なく透析療法を選択する。また,2~3カ月の経過観察で,症状や血尿以外の尿・血液データが回復しない場合は,診断の見直しが必要と考える。

    食塩制限のない水分制限は,不可能であることに留意する。

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