【質問者】
森實千種 国立がん研究センター中央病院 肝胆膵内科医長
【膵癌の一部は生殖細胞系列遺伝子バリアントに起因している】
「遺伝性膵腫瘍」で有名なものには,多発性内分泌腫瘍症1型やvon Hippel-Lindau病にみられる内分泌腫瘍や漿液性囊胞腺腫がありますが,実は膵癌も一部は生殖細胞系列遺伝子バリアントに起因しています。遺伝性膵炎の原因遺伝子PRSS1,Peutz-Jeghers症候群(Peutz-Jeghers syndrome:PJS)のSTK11,家族性異型多発母斑黒色腫症候群のCDKN2A/p16,遺伝性乳癌卵巣癌症候群(hereditary breast and ovarian cancer syndrome:HBOC)のBRCA1/2,リンチ症候群のミスマッチ修復遺伝子などが膵癌の遺伝性に関与する遺伝子です。第一度近親者に2人以上の膵癌患者がいる場合「家族性膵癌」と呼ばれ,膵癌全体の5~10%1)を占めますが,これら遺伝子バリアントが認められる割合は多く見積もっても家族性膵癌の2割以下と考えられています。
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