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【一週一話】音楽家のヘルスケア:現状と課題

No.4759 (2015年07月11日発行) P.49

古屋晋一 (上智大学理工学部情報理工学科准教授/ハノーファー音楽演劇大学客員教授)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-02-15

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  • 音楽家は,毎日数時間の練習を,何十年間にもわたって行う。動作の巧緻性や複雑性の面では,時にアスリートを凌ぐ。正確な動作の反復は,筋と脳神経系の両方への負荷が高い。事実,音楽家の運動器疾患は,古くはシューマンの時代から,洋の東西を問わず,数多く報告されている。

    筆者らの調査では6割以上のピアニストが,練習によって身体に痛みを発症した経験があると回答している。練習時の急性の筋疲労や疼痛は,腱鞘炎や付着部炎に発展しうる。さらに,不自然な位置に手指を置いたまま,反復動作を行うため,正中神経の損傷による手根管症候群を発症する音楽家も少なくない。また,顎で楽器を保持するヴァイオリニストや,ストラップを用いて楽器の自重を体幹で支えるチューバ奏者などでは,胸郭出口症候群を発症するケースも報告されている。

    これまで知られていた音楽家の主な疾患は,前述のような整形外科疾患が中心だったが,近年,音楽家特有の脳神経疾患についての理解が深まりつつある。代表的な脳神経疾患として,局所性ジストニア,振戦,慢性疼痛炎が挙げられる。

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