診療報酬調査専門組織の「医療機関等における消費税負担に関する分科会」が8月4日、およそ2年半ぶりに開かれ、医療機関などにおける消費税負担の診療報酬本体での補てん状況を検証するための調査の実施を決めた。現在実施中の医療経済実態調査のデータを分析に使用することなどから、調査結果の中央社会保険医療協議会総会への報告は11月になる予定。
医療機関や薬局は売上に相当する診療報酬が非課税であることから、仕入税額控除が行えず、医薬品などの仕入や外注費の支払などで生じる消費税をすべて負担しなければならない。このため、過去の消費税率の引き上げ時には、税負担の増加分を診療報酬本体と薬価・医療材料価格に上乗せする補てんが行われてきた。消費税率が10%に引き上げられた2019年度の診療報酬改定時にもこうした措置がとられたが、その際には5%から8%に税率が引き上げられた際の補てん不足分も含む、税率5%から10%に相当する分の診療報酬本体への上乗せが実施された。
このため、今回の調査では、19年度改定時に行った消費税率5%から10%分の診療報酬本体への補てんについて、20年度の状況を検証する。実調の回答施設を分析対象とし、実調で課税経費(減価償却費、委託費、給食用材料費など)の消費税相当額を、レセプト情報・特定健診等情報データベースの20年度分のデータから診療報酬本体に上乗せされている消費税分を把握。両者を突き合わせて個々の医療機関における補てん状況を推計し、開設者別、病院機能別、入院基本料別に区分して比較する。
今回は20年度のデータを調査対象とするため、新型コロナウイルス感染症の影響と消費税の補てん状況をいかに切り分けて分析し、結果を解釈するかが論点のひとつとなる。議論では、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)が「20年度の混乱期のデータで調査し、それをもって消費税がどうであったかという結論を出すのは控えるべきだ」と主張。診療側の今村 聡委員(日本医師会副会長)は、「現時点で結論を出すべきではないと決めるのは少し拙速ではないか」とこれに反論し、11月に報告される調査結果を見た上で判断するべきだとの考えを示した。
また、調査結果で明らかになる開設者別、病院機能別などの補てん状況は、カテゴリ別の医療機関の平均を示すにすぎないとして、複数の診療側の委員が、個別医療機関における補てん状況の分布がわかるデータの追加作成を厚生労働省に要請した。