【質問者】
調 憲 群馬大学大学院医学系研究科総合外科学講座 肝胆膵外科教授
【高齢者肝胆膵癌には活動性維持を考慮した術式適応が重要である】
わが国における2019年度の平均寿命は男性が81.4歳,女性が87.4歳であり,70歳および80歳の方々の平均余命は男性が15.9年,9.2年,女性が20.2年,12.0年と報告されています。がんに対する成績指標が5年生存率により測られることを鑑みると,高齢者であっても悪性疾患に対する治療を適応する意義は否定できません。一方,肝胆膵癌に対する外科治療は非常に侵襲が大きい手術の代表格であり,その適応に関しては慎重であるべきです。以下,それぞれのリスクに関する報告を紹介します。
肝細胞癌に対する肝切除において,Kaiboriら1)が身体精神活動等の高齢指標を用いて70歳以上の高齢者の術後生存率に関する検討を行い,高齢指標が術後6カ月間で悪化する症例の5年生存率は18%と,術後日常生活動作の低下が長期生存率の悪化をまねくことを明らかにしました。
またTanakaら2)は,厚生労働省フレイル指標(運動器,栄養口腔および精神機能を含む)を用いて,高齢肝切除患者が術後に非自立状態に陥るリスク因子は,術前フレイルと判定されること,76歳以上であること,開腹手術であり,術前フレイル評価と介入,腹腔鏡手術を含むより低侵襲肝切除術の実施により術後の自立状態を維持することが長期予後につながると報告しました。
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