診療報酬調査専門組織の入院医療等の調査・評価分科会は8月27日、「救急医療管理加算」や「特定集中治療室管理料」などについて議論した。「救急医療管理加算」では2020年度診療報酬改定で算定対象になる重症度の基準が明確化されたことなどで、軽症者で算定する不適切事例が減少したことや、「加算2」が「脳梗塞」の患者で多く算定されていることなどが明らかになった。
「救急医療管理加算」は、重篤な状態にある救急搬送患者を一般病棟などに受入れた場合の評価だが、従来は算定患者の状態にばらつきがある、軽症者で算定している不適切事例がある―などの問題が指摘されていた。このため20年度改定では、重症度の基準の明確化や算定要件の見直しを実施。具体的には、レセプトの摘要欄に、▶算定対象となる状態(ア~ケ)のうち該当するもの(加算2は、ア~ケのうち準じる状態または、コの「その他の重篤な状態」のうち該当するもの)、▶入院後3日以内に実施した検査、画像、処置、手術のうち主要なもの―などの記載を義務づけた。
改定前後の変化を検証したデータによると、「救急医療管理加算1」では、「意識障害又は昏睡」、「呼吸不全又は心不全で重篤な状態」に該当した算定患者で、状態指標の軽い層の算定割合が、改定後は低下。不適切な算定が一定程度減少したことをうかがわせた。また、「加算2」の算定患者では、コの「その他の重篤な状態」への該当が6割以上を占め、その内訳では「脳梗塞」、「腎臓又は尿路の感染症」、「股関節・大腿近位の骨折」の順に多かった。
井原裕宣委員(社会保険診療報酬支払基金医科専門役)は、検証結果について、「全体的に問題が改善傾向にあることは明らか。さらに進めていけば良い形になるのではないか」と評価した。牧野憲一委員(旭川赤十字病院院長)は、「加算2」の算定が脳梗塞で最も多い点に着目。「本来はSCU(脳卒中ケアユニット)で診るのが理想だが、すべての医療圏にあるわけではなく、通常の医療機関が頑張って診ている。こういうところをきちんと評価するべきではないか」と述べた。
一方、「特定集中治療室管理料」では、ICUの滞在日数上限の扱いが論点となった。現在は14日間が上限となっているが、厚生労働省のデータによると上限を超える患者の割合は、「血液浄化+人工呼吸」(30.9%)や「血液浄化」(25.0%)などの処置、「脳死肝移植」(51.6%)や「生体肺移植」(52.9%)などの臓器移植で高い。このため複数の委員が、特定の状態に該当する場合は算定上限の延長を認めている「小児特定集中治療室管理料」を参考に、対応を検討すべきとの認識を示した。