在宅緩和ケアにおいても,痛みをいかにコントロールするかはきわめて重要な課題である。在宅におけるがん性疼痛緩和療法という特別な方法があるわけではなく,「WHO方式がん疼痛治療法」を基本に,痛みの病態に応じた薬物療法,非薬物療法を行う
疼痛緩和を行う上で,適切な痛みのアセスメントを行うことが肝要であるが,NRSなどの点数だけではなく,日常生活への影響・支障を含めた総合的な評価が重要である
診断アルゴリズムに沿って神経障害性疼痛の診断を行い,適切な鎮痛補助薬を使用する
「私ががんになって病院に行ったとします。そのとき,私がまず望むことは,私のこのつらい気持ちや不安,いらだちを理解するだけの経験と技術を持つ精神科医が私のところに来てくれることではありません。痛みが早くなくなるようにと,神に祈ってくれる敬虔な牧師がベッドサイドに来てくれることでもありません。私が一番望むことは,私の痛みがどういう原因で起きていて,その痛みをとるにはどのような種類の薬剤を,どのくらいの量,どのくらいの間隔で投与すればいいか,きちんと診断できて,すぐに処方し,私の痛みをとってくれることです」
この言葉は,わが国の緩和ケアの先駆者のひとりである柏木哲夫が1979年にセント・クリストファー・ホスピスで研修をした際に,シシリー・ソンダースが述べたものである1)。
在宅緩和ケアにおける本質は「考えること」にある。病態,苦痛,対策を考え,患者とその家族を考えることにあり,死に至るプロセスそのものをコントロールすることは困難であっても,そのまま見守るべきこと,あえて介入すべきこと,介入するとすれば,それはどのようになされるべきなのかを考え続けることが重要である2)。
本稿ではこれらの観点から,在宅でのがん性疼痛の治療について,実臨床で有用と思われることを中心に概説する。
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