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白色舌苔の原因と治療法

No.5084 (2021年10月02日発行) P.52

財津 崇 (東京医科歯科大学歯学部附属病院 息さわやか外来 外来医長)

川口陽子 (東京医科歯科大学歯学部附属病院 息さわやか外来 教授)

登録日: 2021-09-30

最終更新日: 2021-09-28

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白色舌苔の原因と治療法について,特に消化器疾患との関連性をご教示下さい。
(兵庫県 T)


【回答】

【口腔内の自浄作用の低下が大きく影響。舌ブラシ等で除去する】

舌背後方部を観察すると,誰にでもある程度の舌苔(白色~淡黄色)は付着しています。しかし,舌表面の糸状乳頭より厚く盛り上がるほど多量の舌苔が広範囲に付着して,舌が真っ白に見える人もいます。舌苔の微細構造を観察した研究1)によると,舌苔は主として糸状乳頭に由来する剝離角化上皮と細菌により構成されています(図1)。剝離角化上皮は新陳代謝で剝がれ落ちた口腔粘膜の汚れが,舌表面に堆積したものです。

舌苔の付着状況には個人差がみられますが,唾液分泌量,食物の種類と量(摂食形式,食物の性状),咀嚼機能等による口腔内の自浄作用が大きく影響しています。食物を咀嚼すると,唾液分泌量が増加して洗浄作用が高まります。また,食塊に舌表面が頻回に接触することで舌苔は除去され,食後は舌苔量が減少します。

消化器疾患によって食欲不振となり食事の摂取量が少なくなる,すなわち十分な咀嚼が行われないと口腔内の自浄作用が弱くなり,結果として舌苔量が増加することが考えられます。消化器疾患の患者の舌が白くなり,舌苔が多くなるのは二次的な結果で,消化器疾患が直接舌苔を増加させる原因ではありません。

これまでの臨床研究や疫学調査によって,舌苔の付着量は口臭の強弱と大きく関連していることが報告されています1)~4)。舌苔中に含まれる剝離角化上皮等の蛋白質成分を,嫌気性細菌が分解することにより,硫化水素,メチルメルカプタン,ジメチルサルファイド等の揮発性硫黄化合物が産生され,口臭を発生させます。

舌苔は粘着性があり,洗口しただけでは除去できません。舌ブラシや柔らかい歯ブラシで磨いて除去することが必要です。特に,舌背後方部は解剖学的に見ると舌苔が溜まりやすく,また,自浄作用が及びにくい形態になっています。1日に何回も舌清掃をしたり,力を入れて強く磨くと舌乳頭を傷つけて味蕾に障害を与えてしまうので注意が必要です。歯磨きと違って,舌清掃は1日1回行えば十分です。舌苔が最も厚く付着している起床直後に,鏡を見て確認しながら舌を磨くよう患者に指導することが大切です。

【文献】

1)渡邊英明:口病誌. 2006;73(1):26-39.

2)Liu XN, et al:J Clin Periodontol. 2006;33(1): 31-6.

3)Pham TA, et al:Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radiol. 2012;113(1):70-80.

4)Ueno M, et al:Pediatr Int. 2018;60(6):588-92.

【回答者】

財津 崇  東京医科歯科大学歯学部附属病院 息さわやか外来 外来医長

川口陽子 東京医科歯科大学歯学部附属病院 息さわやか外来 教授

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