No.4760 (2015年07月18日発行) P.17
二木 立 (日本福祉大学学長)
登録日: 2016-09-08
最終更新日: 2017-02-15
安倍内閣は6月30日、「経済財政運営と改革の基本方針2015」(以下、「骨太方針2015」)を閣議決定しました。この日は「『日本再興戦略』改訂2015」と「規制改革実施計画」も閣議決定されましたが、「非営利ホールディングカンパニー型法人制度」や「患者申出療養」が目玉とされた昨年と比べ新味に欠けます。そこで、本稿では「骨太方針2015」の医療・社会保障改革方針に絞り、「骨太方針2014」「骨太の方針2006」との異同を検討します。
「骨太方針2015」で最も注目すべきことは、社会保障の「基本的な考え方」の最後で、以下のように、今後5年間の社会保障関係費(一般会計の国庫負担)の抑制の数値目標が明記されたことです。
「安倍内閣のこれまで3年間の経済再生や改革の成果と合わせ、社会保障関係費の実質的な増加が高齢化による増加分に相当する伸び(1.5兆円程度)となっていること、経済・物価動向等を踏まえ、その基調を2018年度まで継続していくことを目安とし、効率化、予防等や制度改革に取り組む。この点も含め、2020年度に向けて、社会保障関係費の伸びを、高齢化による増加分と消費税率引上げとあわせ行う充実等に相当する水準におさめることを目指す」。なお、「目安」は6月22日発表の「素案」にはなく、最終決定で急遽挿入されました。
数値目標の明記とは対照的に、「骨太方針2015」では、「骨太方針2014」で用いられていた「社会保障の機能強化」という表現が削除されました。
政府の閣議決定で、今後5年間の社会保障費抑制の数値目標が明記されたのは、小泉内閣時代の「骨太の方針2006」に以下のように示されて以来、9年ぶりです:「過去5年間の改革(国の一般会計予算ベースで▲1.1兆円(国・地方合わせて▲1.6兆円に相当)の伸びの抑制)を踏まえ、今後5年間においても改革努力を継続する」。これに基づき、社会保障関係費の自然増を毎年2200億円(1.1兆円の5分の1)抑制する「社会保障構造改革」が強行され、それにより「セーフティネット機能の低下や医療・介護の現場の疲弊などの問題が顕著にみられるようになった」のです(『平成24年版厚生労働白書』15頁)。
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