財務省は11月8日の財政制度等審議会財政制度分科会に提出した社会保障に関する資料で、「診療報酬本体のマイナス改定を続けることなくして医療費の適正化は到底図れない」と主張した。個別課題では、かかりつけ医機能の強化について、制度的対応が不可欠だとして改めてかかりつけ医の法制化を提言。かかりつけ医機能を要件化して医療機関を認定する制度を創設し、包括払いの診療報酬で評価する案を示した。入院についても医療費適正化の観点から包括払いの対象拡大を強く求め、1入院当たり包括報酬(DRG/PPS)の本格導入などを提案した。
かかりつけ医機能の強化について財務省は、「制度的対応が不可欠であり、これを欠いたままでの診療報酬上の評価は実効性を伴わない」との認識を表明。かかりつけ医機能の要件を法制上明確化した上で、要件を満たす医療機関を「かかりつけ医」として認定する制度の創設を提言した。診療報酬上の評価は認定した「かかりつけ医」のみを対象とし、支払方式は、継続的・診療科横断的に患者を診る特性を考慮すると、「受診回数や医療行為の回数による出来高払いよりも包括払いがなじむ」とした。かかりつけ医機能を評価する現行の報酬については、外来機能の分化を促進する効果を疑問視し、特に「機能強化加算」について、「ゼロベースでの見直しは必須」と主張した。
入院医療に関しては、地域医療構想による機能分化が遅滞なく進むよう、▶医療費適正化計画上の必須事項とすることも含め、地域医療構想の法制上の位置付けを強化、▶PDCAサイクルの強化、▶医療法上の都道府県知事の権限強化―などを提案した。入院報酬については、現在の医療機関単位・医療行為単位・入院日数単位の評価を主体とした「インプット重視」、「量重視」の報酬体系から「アウトカム重視」、「質重視」の報酬体系にシフトさせる必要があると強調。1入院当たり包括報酬(DRG/PPS)の本格導入や、包括払い対象の本格的拡大を視野に入れた見直しを検討するよう求めた。
薬価制度改革では、初めての実施となった2021年度の毎年薬価改定(中間年の薬価改定)について、▶改定対象品目数が約7割と、これまでの改定より狭い、▶既収載品目の算定ルールのうち、実勢価改定と連動しない「長期収載品の薬価改定」や「新薬創出・適応外薬解消等促進加算の累積額の控除」等が適用されなかった―ことに不満を表明。「これらの点を見直し、完全実施を早期に実現すべき」と訴えた。市場実勢価格の加重平均値に上乗せする「調整幅」にも言及。22年度薬価改定の際に、「調整幅の廃止に向けたロードマップを示しつつ、段階的縮小を実現すべき」と提言した。