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どうなる?診療報酬改定 財務省は「躊躇なくマイナス改定すべき」【まとめてみました】

No.5091 (2021年11月20日発行) P.14

登録日: 2021-11-17

最終更新日: 2021-11-17

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2022年度診療報酬改定の財源を巡り攻防の火ぶたが切られた。財務省は、医療機関の経営実態は補助金などで「近年になく好調」とし、「医療提供体制改革なくして診療報酬改定なし」とマイナス改定を主張。医療界は医療提供体制を「何としても維持」するために財源確保が必要だとしてプラス改定を強く要望する決議を採択した。12月の予算編成で最大の争点になるとみられる診療報酬改定を巡る動きについて詳報する。

財務省の財政制度等審議会財政制度分科会(榊原定征分科会長)は11月8日、2022年度予算編成の建議とりまとめに向けた議論を行い、予算編成の焦点の1つである診療報酬改定について「躊躇なく『マイナス改定』をすべき」と強く主張した。

同省は診療報酬(本体)について、2002年度改定、06年度改定を除き、いわゆる「プラス改定」が続いてきたことから、診療報酬改定以外の⾼齢化等の要因により年平均伸び率1.6%で増加してきた診療報酬(本体)の医療費について、年平均伸び率0.2%を上積みしてきた計算になると指摘。

仮に「マイナス改定」が続いたとしても、2年に1度の診療報酬(本体)の改定率の平均がマイナス3.2%を下回らない限り、理論上は、⾼齢化等による市場拡⼤から医療機関等の収⼊は増加する計算になると分析した。

実際はプラス改定が続いてきたことで「診療報酬(本体)改定率は医療費の適正化とは程遠い対応を繰り返してきたと⾔わざるを得ない」とし、「診療報酬(本体)の『マイナス改定』を続けることなくして医療費の適正化は到底図れない」と強調した。

医療機関の経営「近年になく好調」

同日の分科会で財務省は、コロナ禍における医療費の動向()と医療機関の経営状況(図1)についても報告。2020年度の概算医療費は42.2兆円と対前年度⽐マイナスであったが、21年度に入ってからは、医療機関の⽀援として交付された新型コロナウイルス感染症緊急包括⽀援交付⾦などの補助⾦の影響を除いても、感染拡⼤前の⽔準を回復、さらにそれを上回っていると指摘した。

医療機関全体の収入は、20年度が概算医療費42.2兆円に医療機関に交付された補助⾦2.5兆円(緊急包括⽀援交付⾦2.1兆円、病床確保のための緊急⽀援0.2兆円、発熱患者の外来診療・検査体制確保事業0.1兆円、感染防⽌等補助⾦0.1兆円)を加えた44.7兆円と試算。21年度は機械的推計ではあるものの46.9兆円(医療費44.7兆円、補助金2.1兆円)と見込み、医療機関の経営実態は「近年になく好調」との見方を示した。


診療報酬分配の「見える化」も求める

財務省は、診療報酬財源の分配のあり方も問題視。近年の診療報酬(本体)改定は医科・歯科・調剤について各科の技術料部分が1:1.1:0.3と同程度の伸びになるように改定率が横並びで設定、硬直的になっていると指摘している。

また2009年以降の医療経済実態調査の結果から、一般病院と一般診療所の10年間の収益率を比較し、全年度で診療所のほうが高収益率であると指摘。病院と診療所間の配分を含め、その中で改定財源がどの分野にどのように分配されているのかは明らかにされておらず、「⾒える化」から始める必要があるとして、配分方法の見直しを求めている。

その上で、まずは改定前の診療報酬の伸びがどのような⽔準かを出発点として改定の議論を⾏うことが適当であり、そこが⾼⽌まりしているのであれば、躊躇なく「マイナス改定」をすべきと主張した。


医療界はプラス改定「強く要望する」決議採択

財務省は新型コロナで浮き彫りになった医療提供体制の課題についても「コロナ禍では、病院数・病床数の多さに比して医療従事者が少なく、医療資源が散在し、⼿薄な⼈的配置により『低密度医療』になっており、医療機関相互の役割分担や連携も不⾜している」と指摘。「医療機関の再編・統合を含む地域医療構想の実現、医療従事者の働き⽅改⾰、医師偏在対策の三位⼀体での推進が重要」と強調した。

その上で、「改革の進捗がないまま、あるいは改革の進行を視野に入れることなく、診療報酬改定を行う意義は乏しく、財政資源の散在となりかねない」と問題視。「医療提供体制改革なくして診療報酬改定なし」と断じた。

こうした財務省の動きを医療界は即座に牽制。日本医師会など医療関連41団体で構成する国民医療推進協議会は9日、適切な財源確保を求める決議を採択した。決議は、新型コロナ対策における有事の医療提供体制と平時の医療提供体制を車の両輪として「何としても維持しなくてはならない」と強調、事実上プラス改定を強く要望している。

年末にかけ、日医をはじめとする医療団体、「公的価格」見直しを進める首相官邸、財務省の間で改定率を巡る激しい攻防が繰り広げられるのは確実だ。

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