不整脈とは,心臓の電気信号の異常により,拍動が不規則になる,速くなる(頻脈),遅くなる(徐脈),などの心拍の変化をきたした状態である。広義には,心臓内の電気信号の伝導障害(脚ブロックなど)も不整脈疾患に含む。頻脈性不整脈として心室細動や発作性上室性頻拍,徐脈性不整脈として洞不全症候群や完全房室ブロックなどが挙げられる。本稿では頻脈と徐脈について論じる。
なお,年齢ごとに頻脈・徐脈の基準が異なることに留意して,診療にあたる必要がある。
自覚症状として動悸や結滞を認める場合には,不整脈を鑑別に含めやすい。一方で,乳幼児期では上記の自覚症状を訴えることは稀である。不整脈による循環不全をきたした場合,活気不良・不機嫌・呼吸障害・嘔吐など症状は多岐にわたり,非特異的である。症状や経過から,不整脈を鑑別に挙げることが肝要である。頻脈,徐脈ともに急激な循環破綻をきたした場合,失神や突然死の原因になりうる。
12誘導心電図検査が,診断や責任部位の同定のために必須である。X線,血液検査による心不全評価や,心エコーによる心機能評価も有用である。診察時に症状がない患者については,Holter心電図による24時間記録が適応になる。不整脈のリスク分類・治療適応評価のために,運動負荷心電図を行う場合がある。
第一に循環の破綻=心肺機能不全(意識障害やショック,低血圧)の有無を考えるべきであり,まず循環を維持する治療(酸素投与,気道確保,適切な輸液等)を行いながら不整脈の対応を行う。
循環が維持されている不整脈については,分類や対応が多岐にわたるため,本稿では小児に代表的な房室回帰性頻拍(AVRT)や房室結節リエントリー性頻拍(AVNRT)への対応を記す。
初期対応はPediatric Advanced Life Support(PALS)のアルゴリズム,小児不整脈の各論や詳細な治療,慢性期治療は日本小児循環器学会の「小児不整脈の診断・治療ガイドライン」に整理されているので,参考にされたい。
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