中央社会保険医療協議会総会は11月19日、慢性期入院医療の評価について議論した。「療養病棟入院基本料」では、看護職員配置25対1の経過措置病棟(注11)について、予定通り今年度末で経過措置を終了すべきとする支払側と、延長を求める診療側で意見の対立が続いている。
看護職員配置25対1または、医療区分2・3該当患者5割未満の「注11」に該当する病棟は、20年7月1日時点で109施設・5425床ある。これら病棟は、「療養病棟入院料1、2」の届出病棟に比べて、リハビリテーションの実施回数・単位数や、100床当たりのリハビリ専門職数が多い一方、平均在院日数は短いことがわかっており、リハビリ用の病棟として活用することで、入院料の減算分(「療養病棟入院料2」の85%)を補っているのではないかと問題視する声がある。
このため厚生労働省は今回、回復期リハビリテーション病棟や地域包括ケア病棟におけるリハビリの取扱いも参考資料として示しながら、これら病棟に入院している患者の状況や実施されている医療行為を踏まえた、経過措置や評価のあり方の検討を総会に求めた。
支払側の委員は揃って経過措置の終了を要望。「経過措置の終了を前提とした対応を慎重に検討すべきだ」(安藤伸樹委員・全国健康保険協会理事長)、「リハビリのニーズがあるのなら質が担保された、相応の入院料を設定すべきであり、今の形で単純に経過措置を延長することには反対だ」(松本真人委員・健康保険組合連合会理事)などといった意見が出た。
一方、診療側の城守国斗委員(日本医師会常任理事)は、依然として5000床余りの病床が存在することから、入院患者が不利益を被ることがないよう経過措置の延長を提言。その上で、病棟の転換を無理なく促進できる方策を検討するべきだと主張した。池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)は、現在、リハビリが必要な患者が医療区分2に該当するのは「発症から30日以内」までとされ、それ以降は医療区分1になることから、たとえば、肺炎や骨折の治癒後のリハビリを要する患者を、医療区分2・3該当患者割合が要件化された「療養病棟入院料1、2」病棟に入棟させることはできないと、経過措置病棟を活用せざるを得ない背景を説明。リハビリが必要な患者については、病棟への入棟から30日までは医療区分2とみなす対応を検討してはどうかと提案した。
「療養病棟入院基本料」では、中心静脈栄養からの離脱に向けた、嚥下機能評価・嚥下リハビリテーションの取組みの評価も論点となっている。こうした取組みを推進する必要性では各側の意見が一致しているものの、診療側は医学的な理由から中心静脈栄養を抜去できない患者がいることへの理解を求め、十分な配慮が必要と訴えている。池端委員は、褥瘡が治癒・軽快した場合の扱いを参考に(30日間は医療区分2に該当)、中心静脈栄養抜去後30日間は医療区分3として扱うことを提言。こうした対応が、取組み推進のインセンティブになるのではないかとの見解を示した。
慢性期入院医療ではこのほか、「有床診療所入院基本料」について、在宅療養患者の病状が急変した際の受入れ医療機関を確保する狙いから、受入れ患者の状態に応じた評価のあり方が論点に位置付けられている。