舟状骨骨折は手根骨骨折の60~90%を占める。単純X線で見逃されやすい上に偽関節になりやすいため,初期段階での診断・治療方針決定が重要である。偽関節を形成すると骨移植を伴う手術を要することになる。
X線診断で舟状骨は他の骨と重なり不明瞭なことが多い。舟状骨にフォーカスした撮影方法で診断することが重要である。
転倒し,手をついて受傷することが多い。受傷機転が橈骨遠位端骨折と同じため,鑑別が必要である。圧痛点の確認が重要で,嗅ぎたばこ窩(snuff box)と舟状骨結節の圧痛は舟状骨骨折を強く疑わせる。舟状骨骨折を疑ったら,まずX線撮影を行うが,通常の正側・両斜4方向撮影では不十分で,必ず舟状骨撮影を追加実施する。舟状骨撮影は手関節尺屈正面に加えて,尺屈のまま手関節背屈角度を変えて2~3枚行う。これら一連の画像からも骨折が確認できないことが少なからずあるが,圧痛点が前述の部位に認められる場合は手関節外固定を行い,1~2週の間隔でX線撮影を行い確認する。MRIでは軽微な骨折の診断が可能であり,誤診を減らすのに有用である。
舟状骨の栄養血管は遠位掌側および背側から入り骨内を近位方向に走行するため,近位ほど血行が悪く骨癒合しにくい。前述の血行動態の観点からHerbert分類の遠位部および転位のない体部の新鮮骨折のみが保存治療の適応であり,その他の骨折型は手術適応と考える。
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