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佐藤泰然(7)[連載小説「群星光芒」229]

No.4817 (2016年08月20日発行) P.70

篠田達明

登録日: 2016-09-16

最終更新日: 2017-01-20

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  • 天保10(1839)年、佐藤泰然は『尚歯会』社中の渡辺崋山と高野長英が公儀の対外政策を批判したとして投獄されたことを知った。崋山は自決に追いやられ、長英も永牢(終身刑)に処せられた。

    泰然は入牢前の長英を数日間匿ったことがある。彼の幕政批判書『夢物語』も隠し持っていたが、これまで奉行所の取り調べを受けたことはなかった。

    ――もし、このたびの奉行所の訊問で高野長英との関わりを突かれたら何と答えるべきか?

    『尚歯会』社中の検挙を主導した老中首座水野忠邦の峻厳さはその苛酷な政治改革によって夙に知られる。

    ――そのときはありのままを話すよりほかあるまい。

    泰然はそう肚をくくった。

    天保12年7月朔日、佐藤藤佐と嗣子の泰然は数寄屋橋の南町奉行所に出頭した。翌日、奉行所の内詮議所で評定所から出役した留役の事前聴取があった。

    留役は品のいい老人で聞き取りは形ばかりだった。恐れていた高野長英との繋がりも訊かれずに済んだ。

    いささか拍子抜けした泰然だったが、午後からはじまった詮議部屋での訊問は恐るべき展開となった。

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