動画配信サービス「Web医事新報チャンネル」の企画で収録した討論「新型コロナ後遺症はここまで改善できる!」の模様をダイジェストでお届けします。討論の全編は小社サイトの動画ページ(www.jmedj.co.jp/movie/)でご覧いただけます。
新型コロナウイルスの新規感染者数は大小の波を繰り返すのに対し、新型コロナの後遺症は、遅れて発症するケースや症状が長期にわたるケースもあるため患者数が一貫して増え続けている。
11月30日にオンラインで収録した討論では、地域の基幹病院として新型コロナ感染症に対応する昭和大学病院(東京・品川区)の相良博典病院長と、コロナ後遺症外来で多くの患者を受け入れ最新情報を発信し続けるヒラハタクリニック(東京・渋谷区)の平畑光一院長が、後遺症の症状・治療法でこれまでにわかったこと・いまだわからないことについて討議した。
相良 新型コロナ後遺症についてはこれまでにいろいろなスタディが出てきているが、なかなか(見解が)まとまらない。実践的に診てらっしゃる平畑先生の率直な感想をうかがいたい。
平畑 治療の面で統一された見解はないし、特効薬がないのが現状。いまある武器の中でどのようにして患者の症状を改善させるかが大事なポイントになると考えている。
相良 症状が出るタイミングもまちまちだが、先生の経験ではどうか。
平畑 急性期は無症状で、そこから後遺症になる患者もたくさんいるし、罹患後ずっと症状がなくて1年後に後遺症らしき症状が出てきたという方もいる。2年近く後遺症が続いているという方もいて、「いつ治る」ということがなかなか言い切れない。いったん治ったと思った方も強い運動をした時に後遺症の症状が出てくることがある。
脱毛や味覚・嗅覚障害だけであれば「完治」と言える状態になることもあるが、日本人に多い倦怠感を中心とする後遺症は、「完治」とはなかなか言いづらい。難しい病気だと感じている。
相良 倦怠感を後遺症としてとらえるときは何がポイントになるか。
平畑 「倦怠感」と一口に言っても「なんとなくだるい」から寝たきりになって動けなくなるケースまで幅が広い。ポイントになるのは、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)の徴候であるPEM(Post-exertional malaise)がみられる場合が多いこと。
当院の後遺症外来に来る患者の4割にこのPEMがみられる。どういう症状かというと、買い物に行くなどの軽い負荷で5時間~48時間後に急激にだるくなる。このように時間差をおいて倦怠感などが出るPEMが確認された場合はリスクが高いと指摘されている。
WHOの公開資料でもPEMがある場合は運動を控えるようにと明記されている。これが世界的なコンセンサスだが、後遺症外来の医師の間でも十分に認知されていない。ここが後遺症外来の大きな問題の1つになっていると思っている。
相良 症状にもよると思うが、後遺症の治療についてはどう考えているか。
平畑 脱毛以外に関しては上咽頭擦過療法がかなり効くケースが多いと感じている。
当院では、運動を控えるなどの生活療法、上咽頭擦過療法、漢方薬を中心に治療をしているが、重症の後遺症患者の7割に効果がみられている。いまある武器でもかなり戦えているという印象を持っている。
相良 例えば、コロナ感染後早い段階から漢方薬を服用してもらうという方法はありか。
平畑 ありだと思う。早い段階で後遺症の気配が見えている方もいるが、そういう方に対して生活療法とともに適切な漢方薬を投与することで症状を軽くすることは十分可能。いいアイデアだと思う。
最初に介入したほうが患者の不安感は少ない。何かしら治療をしているということが安心感につながる。それがまた心理的な意味でも良い影響がある。
相良 治療をどのくらい続ければいいかという問題についてはいかがか。
平畑 患者が症状を訴えている限りは医療を提供することが大切。ただ、それは急性期病院がやることではない。慢性期の症状については地域の開業医がケアしていくことが適切ではないか。
相良 地域の先生方が一体となって治療介入していかないといけない。医療連携が重要だと思う。
相良 コロナ後遺症に関してはまだまだわからないことがたくさんある。我々はこの問題をどう見ていけばいいか。
平畑 まずは世界的な流れを知っていかないといけない。米国ではコロナ後遺症とME/CFSの関連について国家予算をかけて研究を進めている。WHOもいろいろな資料を公開しているが、日本はなぜかそこについて無関心に近い状況が続いている。
厚労省を含め、啓発の動きを全体として進めていく必要があるのではないか。