神経内分泌腫瘍(neuroendocrine neoplasm:NEN)は神経内分泌細胞に由来する腫瘍の総称で,神経内分泌細胞は全身に分布するため,腫瘍も全身の臓器(呼吸器,消化器,生殖器,泌尿器,感覚器など)に発生する。NENはスペクトラムの広い疾患であり,比較的おとなしい高分化型神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor:NET)と,予後がきわめて不良な低分化型神経内分泌癌(neuroendocrine carcinoma:NEC)の2つに大きく分類される。
膵NENの場合には,一般的な組織診断および進行度のみでなく,ホルモン産生症状の有無,遺伝性疾患を背景に有しているか否かなど,様々な観点から分類される。これらは治療方針を決める際に考慮される。
膵NETの中には産生ホルモンによる症状を呈する一群があり,「機能性(functional)」と呼ばれる。消化性潰瘍や下痢を呈するガストリノーマ,低血糖発作を呈するインスリノーマ,遊走性壊死性紅斑や耐糖能障害を呈するグルカゴノーマが代表的である。一方,そのようなホルモン過剰分泌による症状を有さない一群は,「非機能性」と分類される。
膵消化管NETの90%以上は孤発性に発生するが,中には生殖細胞系遺伝子の病的変異に伴って発生するものがある。NETを生じうる遺伝性疾患には様々なものがあるが,特に多発性内分泌腫瘍症1型(multiple endocrine neoplasia type 1:MEN1)が最も膵NETの発症頻度が高い。MEN1を有する患者における膵消化管NETの罹病率は約60%とされる。MEN1症例で生命予後を規定する主たる疾患は膵NETと胸腺NETとされている。国内ガイドライン1)においても膵消化管NENの診断の時点からMEN1を疑うこと,除外を行うことを強調している。
一般的に超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)により行われる。NETの場合は,WHO2019(Digestive System Tumours. 5th ed.2))で,Ki-67 labeling index,核分裂数の2項目に基づき,悪性度がNET G1~NET G3に分類される。インスリノーマやガストリノーマなどの機能性NETは,非常に小さく見つかりにくいことがあり,注意が必要である。
一般的な画像検査のほか,NENに特異的なソマトスタチン受容体シンチグラフィ(SRS)がある。高分化NETはソマトスタチン受容体(SSTR)の発現増加が大きな特徴であり,約95%に発現しているとされる。その特徴を利用したものがSRSであり,SSTRに親和性の高いソマトスタチンアナログを放射性同位元素で標識させた検査法である。わが国で使用可能なSRSは,ペンテトレオチドを111Inで標識させた検査薬〔オクトレオスキャン®(インジウムペンテトレオチド)〕である。全身のNETの存在部位の診断のほか,SSTRを利用したソマトスタチンアナログ製剤やpeptide receptor radionuclide therapy(PRRT,2021年6月に保険適用となった放射線内用療法)の治療適応を考慮する際にも用いられる。
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