一般的にはMycoplasma pneumoniaeによる呼吸器感染症および合併症を指す。学童期以降の市中肺炎の原因微生物としては最も多いが,年少児の患者も報告されている。潜伏期間は2〜3週間で,発熱,筋肉痛,全身倦怠感,咽頭痛などから発症し,3〜5日後に咳嗽が出現する。咳嗽は解熱してから2週間以上継続する。肺外病変として結膜炎,中耳炎,髄膜脳炎,関節炎,心膜炎など多彩な症状があり,ギラン・バレー症候群や血球貪食症候群との関与なども報告されている1)。
年齢・周囲流行で検査前確率を評価し,診断は迅速抗原検査,PCR検査(LAMP法含む),抗体検査などで確定診断に至る。
マイコプラズマ感染症は細菌感染症であるが,対症療法で自然に治癒する場合が多い。一方で抗菌薬処方によって発熱期間が短縮された報告1)もあり,抗菌薬処方による臨床的改善の治療必要例数(NNT)は8.33と報告されている1)。そのため適切に診断した場合には抗菌薬処方も推奨され,抗菌薬の第一選択はマクロライド系抗菌薬である。クラリスロマイシンは内服期間が10日間であるのに対し,アジスロマイシンは3日間であるため,コンプライアンスの観点から後者が推奨されるが,やや苦味が強いことが注意点である。
マクロライド系抗菌薬の臨床効果は投与後2〜3日以内の解熱でおおむね評価できる。一方で,内服後も発熱が継続した場合にはマクロライド耐性菌を疑い,抗菌薬を変更するのではなく,その他の細菌・ウイルス感染症の関与や血球貪食症候群などの合併症がないかの評価を行うことが重要である。抗菌薬適正使用の観点からも,ルーチンでニューキノロン系やテトラサイクリン系抗菌薬を処方せずに,上記評価を行った上で変更を検討することを推奨する。また,テトラサイクリン系抗菌薬は8歳未満には原則禁忌であることにも留意する。
発熱が7日以上継続し,LDHが480IU/Lを超える重篤なマイコプラズマ肺炎に対してステロイド全身投与で効果が期待できるという報告があるが2),マイコプラズマ感染症へのステロイド投与が予後に影響を与えず,入院期間が延長したという報告もある3)。明確なエビデンスは少ないため,ルーチンで安易に使用はせず,適切な診断・抗菌薬治療を行った上で改善しない重篤なマイコプラズマ肺炎に限定するべきである。
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