慢性中耳炎は鼓膜穿孔による難聴と炎症の持続による耳漏をきたし,患者のQOLを低下させる。幼少児の中耳炎において不十分な治療により穿孔と炎症が持続するために生じることが多いが,鼓膜換気チューブ抜去後の穿孔や外傷性鼓膜穿孔が原因となることもある。放置すると徐々に難聴の増悪をきたし,急性増悪時の通院を繰り返すこととなる。治療は,消炎後に手術を行う。
慢性中耳炎の診断は比較的容易で,臨床症状は耳漏と難聴で多くは無痛性である。鼓膜所見は単純鼓膜穿孔を認めるが,感染が持続すると,鼓室粘膜の腫脹を認める。聴力検査では,穿孔の大きさに応じた伝音難聴を認めるが,炎症の持続により耳小骨の可動性が低下すると,気骨導差が増大し難聴が進行する。さらに,内耳障害が加わると,混合性難聴となる。鑑別診断では,真珠腫性中耳炎や鼓室硬化症を除外して,治療方針を立てる必要がある。一次性真珠腫は鼓膜陥凹があり,通常,視診で鑑別は容易であるが,二次性真珠腫はあたかも穿孔性中耳炎のようで鑑別が難しい場合があり,穿孔縁に痂皮が付着している,穿孔縁が鼓膜輪に接している,穿孔が不整である,などの所見に注意する。CTが鑑別に有用である。
細菌培養検査は重要で,投薬開始前に行う。黄色ブドウ球菌が検出されることが多いが,緑膿菌やメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が検出される例もある。後者の場合,起炎菌か否か検討し,起炎菌と判断されれば,抗MRSA薬を用いた術前の消炎を図る。鼓室洗浄も怠ってはならない。稀に結核性中耳炎があるため,難治例では考慮する必要がある。
まず,細菌検査の結果を参考に保存的治療を行い,感染を制御する。耳漏が多い場合には鼓室洗浄を頻回に行う。基本的には超高齢者や全身状態が悪い患者を除いて,手術適応となる。小児の場合は,耳管機能がよくなる10歳前後に手術を計画する。手術を希望しない場合は,補聴器の装用も考慮するが,耳漏があれば装用を中止する必要があり,長期にわたって通院と聴覚管理が必要になる。
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