長崎大学病院呼吸器内科講師の山本和子氏は3月7日、キリンホールディングス主催の研究発表会で、同病院を中心に実施している「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者に対するプラズマ乳酸菌を用いた特定臨床研究」(PLATEAU study)の進捗状況を報告し、軽症COVID-19患者に対しては「抗ウイルス薬に加えて、体内の免疫の調節アプローチによる治療戦略が必要」と強調した。
プラズマ乳酸菌(L. lactis strain Plasma)は、「ウイルス感染防御を担う免疫系の司令塔」とされるpDC(プラズマサイトイド樹状細胞)を活性化する乳酸菌で、キリンが2010年に発見した。これまでにインフルエンザウイルスなど各種ウイルスに対する数多くの臨床・非臨床の研究が行われ、論文化されている。
山本氏が報告した特定臨床研究は、COVID-19に対するプラズマ乳酸菌の効果を世界で初めて検証するもの。試験は無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験として行われ、参加に同意した軽症患者100名のうち50名にプラズマ乳酸菌(200㎎/日)含有カプセル、50名にプラセボカプセルを14日間摂取してもらい症状緩和効果を検証する。
症例登録は1月7日からスタートし、3月4日時点で87名に達した。山本氏は「長崎での第6波の流行開始とほぼ同時に症例の組み入れを開始できた」とし、「おそらく3月中に組み入れは終了する」との見通しを示した。データ解析を経て、研究結果が報告できるのは「年末あたりではないか」と述べた。
COVID-19に対する治療戦略について山本氏は、現在は抗ウイルス薬と抗炎症・免疫調節薬が中心となっているとしながら、「副作用が少なく、より使いやすい内服の免疫調節薬があれば理想的」と述べ、pDCを活性化することで「免疫を底上げする」プラズマ乳酸菌の効果に期待を示した。
プラズマ乳酸菌の製品は、医療機関向けには現在サプリメント(機能性表示食品)が市販されているが、今後の医薬品開発の可能性についてキリンホールディングスの藤原大介ヘルスサイエンス事業部長はこの日の発表会で「今回の研究結果を踏まえ、開発できるか検証する予定になっている」とコメントした。
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