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【書評】『発症メカニズムから考える循環器診療─あるある症状にキレキレの対応をしよう!』臨床能力に卓越した著者の思考プロセスを学ぶことができる

No.5115 (2022年05月07日発行) P.67

山中克郎 (福島県立医科大学会津医療センター総合内科学講座教授)

登録日: 2022-05-04

最終更新日: 2022-05-02

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著者の若林禎正先生にはいくつかの特筆すべき長所がある。そのうちのひとつは家庭医療専門医であるということである。すなわちすべての内科疾患を対象に、患者の置かれている社会的背景を鑑みながら必要な治療を行う。さらに循環器内科の部長として、急性期の循環器重症疾患にも立ち向かう。

諏訪中央病院の内科教育は、自分の専門分野にこだわらず、軽症から重症まですべての疾患を幅広く診察し、医学生や若手医師の教育にも熱心であることが特徴である。私が諏訪中央病院で学んだ5年間、若林先生は若きリーダーとして存在感を示していた。何度か若林先生と一緒に診療をしたが、頭の回転の速さと、正しい判断に基づく「キレキレの診療」、教育力の高さに驚きの連続だった。

「打撃の神様」と呼ばれた川上哲治は、「ボールが止まって見えた」と答えたことがある。臨床能力に卓越した医師は、瞬時に鑑別診断がひらめき問診と診察を繰り広げるのであろう。しかし、その思考プロセスは他の医師にとってわかりにくい。

この本では若林先生の頭の中が紐解かれている。どのような問診をすれば診断を狭めることができるのか、狙うべき重要な身体所見は何か、さらに病態生理に基づきその疾患の本質や、どうしてこのような症状となるかが明らかとなる。

取り上げられている疾患には、私が諏訪中央病院で見聞きした症例もいくつか含まれている。それらは典型的というよりは、少しuncommonなプレゼンテーションであり、こんな症状も起こすのか、このように診察をすれば診断できるのかと唸らせる症例なのである。

噂によれば、若林先生は私が愛用している「ヘルシオ ホットクック」で自炊しているようである。ホットクックは具材を入れてボタンを押すだけの優れものの電気鍋である。さあ今日は「チキンと野菜のカレー」を食べながら本書を読み、若林先生の臨床の智慧を盗むか。

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