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アルツハイマー型認知症[私の治療]

No.5117 (2022年05月21日発行) P.48

岩田 淳 (東京都健康長寿医療センター脳神経内科部長)

登録日: 2022-05-21

最終更新日: 2022-05-17

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  • 脳の間質にまずアミロイドβ(Aβ)が,次に神経細胞内にリン酸化tauが蓄積し,認知機能障害を引き起こす疾患である。Aβ蓄積は認知機能低下発症の20年近く前より始まるが,症状の直接的原因は,その後に始まるtauの蓄積による神経細胞の機能障害と細胞死である。65歳前発症の場合は若年性と定義し,PSEN1,PSEN2,APPなどの変異を有する常染色体性遺伝の場合やAPOEε4アレル保持の可能性がある。

    ▶診断のポイント

    初発症状として多いのは,側頭葉内側面の障害に起因する近時記憶障害(エピソード記憶障害)であり,数日~数週間程度の時間がたつと,ある程度印象的な出来事でもその記憶が薄れ,失われてしまう。つまり,家族とどこへ旅行して何をしたというような記憶や,いつ誰が来客した,などという記憶が障害される。進行すると,時間や場所の見当識に障害が出現し,自分の持ち物をどこに置いたか忘れてしまい,なくなったことを家族のせいにする(物取られ妄想),食事をしたことを覚えていないなどの症状へも進展する。さらに頭頂葉に病変が進展すれば,視空間認知障害(道に迷うなど),計算力の障害,着衣に問題を生じる,などが出現,前頭葉に病変が及べば,料理がつくれない,風呂で体の洗い方がわからないといった遂行機能障害を生じ,最終的には自己の認識も消失していく。

    現状の臨床診断基準では,主に上記のような臨床症状から診断するが,病期が軽度認知障害期ではなく認知症と診断するためには,認知機能の低下に伴って日常生活に何らかの介助が必要となっていることが前提となる。診断の補助としては,脳MRIや脳血流SPECT,そして脳脊髄液リン酸化tau測定が保険適用である。臨床診断基準にはICD,DSM-5,NIA-AAなどがあり,進行性の認知機能障害(記憶,失語,失認,失行など)に加えて内側側頭葉,特に海馬および海馬傍回の萎縮をMRIなどの画像診断で確認する点はほぼ共通している。

    鑑別すべき疾患として,他の認知症をきたす疾患はもちろんだが,治療可能な甲状腺機能低下,ビタミンB群欠乏,神経梅毒などがあるため,それらを見逃さない努力が必要である。上記の中で代表的なNIA-AAの診断基準1)は,脳脊髄液などの検査結果を参考にしない場合は感度65.6%,特異度95.2%であるため2),認知機能低下が主訴の患者は,経過中に診断を変更する可能性があることを覚えておくべきである。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    現在では対症療法のみである。アルツハイマー型認知症の病期は軽度,中等度,高度に分類され,それぞれ適応のある薬剤が異なる。軽度は買い物,仕事,服薬といった主に社会生活上の自立が失われる状態,中等度は着衣の障害,入浴の障害,道に迷うなどの自分の身の周りの生活上の自立が失われる状態,高度は排泄,食事といった生命維持に必要な機能の自立性が失われる状態である。現状で使用できる薬剤は4種類あるため,病期ごとに使い分ける。

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