【質問者】
内田宗志 産業医科大学若松病院整形外科 診療教授・診療科長
【診断にはエコーが有用で,手術では斜角筋の全切離が重要である】
TOSは整形外科学の中ではよく知られている疾患ですが,保存治療や手術は敬遠されることも多いのが現状です。さらに,診断すらもつかないまま精神疾患と勘違いされ投薬を開始されてしまう例も少なからずありますので,しっかりと患者と向き合い,診断と治療を見直していかなければならないと思っています。
近年,我々は鏡視下手術を考案し,2012~22年現在までに700例以上の鏡視下手術を行ってきました。多数例の手術経験からよくなる傾向の所見,手術のコツなどもだんだんわかってきました。
トピックとしては,診断のひとつのツールとしてエコー診断が挙げられます。鎖骨上窩からエコーを当てると,前・中斜角筋の第一肋骨停止部の間の距離(interscalene distance:ISD,つまり神経血管の通り道)に個人差が多く,ISDが狭い例ではTOSをきたしやすい傾向があります。それに伴って神経血管束(neurovascular bundle:NVB)の走行も偏位していることもあり,エコーにて明らかなISDの狭窄,NVBの偏位がみられる場合にはTOSの診断が容易となってきました。
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