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肝性脳症[私の治療]

No.5120 (2022年06月11日発行) P.42

川口 巧 (久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門准教授)

鳥村拓司 (久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門主任教授)

登録日: 2022-06-13

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  • 肝性脳症は,肝代謝を受けなかった毒性物質が中枢神経に作用することによって発症する神経機能障害である。肝性脳症の発症には,肝機能の低下,門脈-大循環短絡,便秘,消化管出血,窒素負荷,脱水,感染症,向精神薬や利尿薬などが関与する。肝性脳症の治療は,神経機能障害を認める場合だけでなく,再発予防のための治療も重要である。

    ▶診断のポイント

    指南力の低下,羽ばたき振戦,異常行動などが認められた場合に肝性脳症を疑う。肝性脳症は慢性肝疾患患者に認められる場合が多いが,急性肝不全(肝疾患を基礎疾患に有しない)患者でも認められることがある。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    肝性脳症の治療は,毒性物質の除去とアミノ酸インバランスの是正が基本である。羽ばたき振戦や異常行動などの神経機能障害を認め,便秘や排便量が低下している場合は,アンモニアをはじめとする腸管内の毒性物質を除去する目的で浣腸を行う。次に,慢性肝疾患患者の場合は,アミノ酸インバランス是正のために肝不全用アミノ酸注射液を点滴投与する。同時に,タール便や貧血の進行が認められれば消化管出血の有無を確認し,脱水や向精神薬,利尿薬の使用が肝性脳症の発症に関わると考えられる場合は,補液や処方の調整が必要となる。

    傾眠傾向や消化管出血などによる経口摂取不能時には絶食とし,静脈栄養管理を行う。アミノ酸製剤は肝不全用アミノ酸注射液を用いる。

    経口摂取が可能となった場合には,食事と肝不全用経口栄養剤による摂取エネルギーを25~30kcal/kg/日,蛋白摂取量を1.2g/kg/日に調整する。摂取エネルギーや蛋白量の制限は,低栄養状態を助長するため基本的には行わない。食事療法に加えて,合成二糖類,肝不全用経口栄養剤,難吸収性抗菌薬,レボカルニチン,酢酸亜鉛水和物を病態に応じて投薬する。

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