わが国での糖質制限の理論や実践においては第一人者である山田悟先生の『「緩やかな糖質制限」ハンドブック』がこの度改訂された。具体的な患者さんへの指導が記載され,さらに糖質制限に関する最新のエビデンスも追加されている。
私も学会等で山田先生の講演を拝聴してから,外来の食事指導ではハンドブックの内容を参考にして,まずは緩やかな糖質制限(ロカボ)を提案している。実臨床でも,緩やかな糖質制限の有用性を実感している。
多くの先生方により緩やかな糖質制限の有用性は認知されているものの,糖質制限については試験デザインやその介入方法など様々なデータがあるため,「効果はあると思うが,なんとなくすっきりしない」や「実際にどのように指導したらいいかわからない」といった意見や相談を受ける。まさにこの『「緩やかな糖質制限」ハンドブック』は,その実臨床の疑問を解決するには最適な本と思われる。
1章と2章には糖質制限の必要性と意義および最新エビデンス,3章には三大栄養素やその代謝面を理解した上での糖質制限のポイントや留意点がコンパクトにまとめられ,1章から3章だけでも購入して手元に置いておく意義がある。また,個人的な意見や経験ではなく,多くが先行した論文に基づいているため,大変説得力がある。
最短で糖質制限のエビデンスやその理論を身につけるにはまず,この本の1章から3章を読んで頂きたい。4章以降は導入の実際や指導など,実臨床での導入における疑問や患者さんの疑問を解決できる多くのコツや答えがまとめてある。資料も代表的な食品の糖質量の目安などが付属しており,活用したい。
この度は電子版も無料閲覧できるようになっており,かゆいところに手が届いた改訂版になっている。さらに新しくなったエビデンスの確認や電子版の活用を考えて,3版以前をお持ちの方にもお勧めしたい。