本腫瘍は高齢者に生じる代表的な良性腫瘍である。好発部位は露光部である顔面,前腕,手背で,発症初期の多くは老人性色素斑である。しかし,体幹に数カ月の経過で瘙痒を伴って多発したり(Leser-Trélat syndrome),クリスマスツリー状に多発してくることがある。このような症例では,腺癌を中心とした悪性腫瘍を合併することがあるため,注意を要する。
本疾患において最も重要なのは診断である。通常形状や大きさは様々であるが,境界は明瞭な結節で色も淡い褐色から黒色調を呈し,表面は疣状であることが多く,下床との可動性も良好である。肉眼的所見から典型的であれば診断は容易であるが,露光部に好発するため,万が一悪性腫瘍であれば侵襲の大きな治療を要することになる。そのため,患者には全身のみならず整容的にも負担が大きくなる。
特に黒色調が強くなると,肉眼的に基底細胞癌と悪性黒色腫との鑑別が困難となる症例があり,その際はダーモスコピーによる詳細な検討や,それでも鑑別困難であれば生検して病理組織学的検討も必要となる。
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