高血圧や脂質異常症で通院されていたKさんのことである。数日前から食後に胃がもたれるとおっしゃる。これまで胃の症状を訴えられることのなかったKさんなので、胃内視鏡をすることにした。
初めての胃カメラで緊張気味のKさんだったが、胃内を観察した私もびっくりである。前庭部に金属片が突き刺さっているではないか(写真1)。胃部不快感の原因はわかったが、さてどうしたものか。よせばよいのに色気が出てしまった。病院勤務の頃とは違って設備のない開業医なのに把持鉗子でつまんでしまった。すると、金属片がズルズルと抜けてしまったのである。抜けてしまうと、意外に長くて固い曲がった金属片である。しまった、抜かなければよかったと思ったものの後の祭りである。なんとか取り出そうと試みたのだが、食道下部でつかえて出血させるばかりである。
慌てて地域の基幹病院で懇意にしている消化器内科の先生に事情を話して、すぐに内視鏡をして頂いた。だが、時既に遅し。金属片は胃内にはなく、小腸内に移動しているようです、との返事である。
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