哲学者、社会評論家、文学者である三木 清が、死、幸福、懐疑、旅、孤独など23題のテーマについて論じた一冊
(三木 清著、新潮文庫、1978年刊)
なぜ精神科医になったのか。それは、「人間」を生涯のテーマとしたいと思ったからである。その最初のきっかけを与えてくれたのが、島崎敏樹著『生きるとは何か』であったとすれば、『人生論ノート』は、それをいよいよ決心させた書であった。
本書中の「旅について」は、明治書院の『現代国語・Ⅲ』に採用されていたので、ご記憶の方もおられるであろう。私も、教科書で著者を知り、本書を求めた。
当時の私は、本書の哲学形式がアフォリズムというものであることを知らなかったし、著者の思索の背後にパスカルとハイデッガーがいるという知識もなかった。ただ、人生の根本問題を、感情を抑えた淡々とした筆致で記していく、その思索の深みに驚嘆した。
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