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音響外傷・騒音性難聴[私の治療]

No.5128 (2022年08月06日発行) P.52

田渕経司 (筑波大学医学医療系耳鼻咽喉科・頭頸部外科教授)

登録日: 2022-08-04

最終更新日: 2022-08-02

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  • 狭義の音響外傷は,強大音響に短時間曝露された際に発症する難聴である。また狭義の騒音性難聴は,一定以上〔85dB(A)以上〕の騒音職場に,数年以上(多くの場合5年以上)従事する際に発症してくる難聴である。職場の騒音の音圧については,80dB(A)未満であれば難聴に至る可能性はきわめて低いと考えられており,日本においては「騒音障害防止のためのガイドライン(平成4年10月1日 基発第546号)」により85dB(A)が職場の騒音の許容基準とされている。

    *:作業場を縦,横6m以下の等間隔で引いた交点を測定点とし,床上1.2~1.5mの間で測定することをA測定という。

    ▶診断のポイント

    音響外傷・騒音性難聴のいずれにおいても強大音響の曝露の問診が重要である。

    音響外傷では,原因となる強大音響曝露後速やかに難聴を呈するため,発症の経過を問診することにより診断しやすい。騒音性難聴の診断については,慢性に経過するため,職歴,騒音曝露歴,難聴の経過等の問診と聴力検査の結果や経過を考慮し,さらに他疾患を除外することで診断がなされる。

    多くの場合,騒音性難聴では数年以上の長い年月の騒音職場への勤務により,発症,進行する。①現在,過去の職業に何年勤めているか,②どれくらいの騒音の強さか,③実際に強い音を発する機械・工具を操作していたか,④現在,過去の職歴で聴覚保護具を装用していたか,等についての問診は状況の把握に有用である。

    基本的には蝸牛の障害であり,前庭症状(めまい)は伴わない。

    【検査所見】

    音響外傷・騒音性難聴のいずれも基本的には内耳障害による感音難聴が生じる。すなわち,鼓膜所見は正常で,気骨導差のない感音難聴を呈する。特に騒音性難聴の場合では,C5-dip(4kHzでの聴力閾値上昇)をはじめとする高音域の感音難聴を呈し,病状の進行により中音域への障害を認める場合が多い。また騒音性難聴では,一般に両側対称性の聴力障害を呈しやすい。

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