【質問者】
古島弘三 慶友整形外科病院整形外科部長
【治療の基本は理学療法であるが,時に手術を要する場合がある】
投球肩障害は,肘に比べると手術になる頻度が低く,肘同様に身体機能を修正する理学療法がよく奏効します。身体機能不全の病態としては,肩甲骨のprotractionと上腕骨頭の関節窩に対するmalpositionをきたしている場合がほとんどで,腱板筋群の筋出力の低下とそれを代償するために肩甲骨周囲筋の筋緊張亢進が起こります。そうなると解剖学的破綻の有無にかかわらず,投球時のインターナルインピンジメント,胸郭出口症候群様の上肢神経症状のみならず,肘関節における外反ストレスが増強し,加速期での肘内側痛やフォロースルー期での肘後方痛をきたします。
投球肩障害の治療は,理学所見で上記のような身体機能異常を把握すると同時に,画像診断にて局所の解剖学的異常の把握を行った上で,身体機能異常を修正していくことが基本となります。外来では,上腕骨頭の位置を徒手的に戻すことで,腱板筋出力が即座に戻り肩甲帯周囲筋の筋緊張も消失します。この状態でインターナルインピンジメントの肢位をとり,痛みが消失や軽減するようであれば,理学療法部で上腕骨頭の求心性の維持を目的とした運動療法を行っていきます。1カ月後の再診時には,ほとんどの症例で症状の消失あるいは軽減がみられます。
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