本連載(122)「『骨太方針2022』の社会保障・医療改革方針をどう読むか?」(本誌7月2日号)で、「財務省はプライマリケアや定額報酬が医療費を抑制すると思っているようですが、国内的・国際的経験でそれは否定されています」と書きました。この点について複数の友人から質問を受けました。
入院の定額報酬(包括払い)により医療費が増加することは、日本での老人病院包括払い導入や急性期病院のDPC方式導入等で、広く知られています。
それに対して、一部のプライマリケア医や研究者は、以前から、プライマリケアの拡充で医療費を抑制・節減できると主張しています。私も、プライマリケアと医療の質と医療費との関係について興味があり、20年以上文献を渉猟しています。プライマリケアの拡充が医療の質を引き上げるとの報告は少なくありませんが、プライマリケアの拡充が医療費を抑制することを示した実証研究は読んだことがありません。逆に、医療費が増えるか、医療費は変化しないとの良質な研究はたくさんあります。本稿では、過去10年間に発表された主な研究を紹介します。