鼻出血は,多くの診療科の一般診療の場で遭遇する機会のある症候であり,夜間には救急外来での対応が求められることもある。そのため,どの診療科の医師であっても,基本的な止血法について理解した上で初期対応を行う必要があるが,それでも止血しない場合は,耳鼻咽喉科専門医へ紹介する。
鼻出血は,原因疾患のない本態性鼻出血と,原因疾患〔オスラー病(遺伝性出血性末梢血管拡張症)など〕や何らかの誘因(抗凝固薬や抗血小板薬の服用など)が存在する二次性鼻出血に分類される。まず問診を行うことにより,どちらのタイプの鼻出血かを確認する。また,鼻出血をきたした際の状況について詳しく問診することよって,出血部位を大まかに予測することもできる。
鼻出血の約70~90%が,前方出血と呼ばれるKiesselbach部位からの出血であるため,前鼻孔からの出血であれば,まずは鼻中隔前方からの出血を疑って止血法を検討する。しかし,前鼻孔だけでなく咽頭へ血液が多く流れている場合は,鼻腔の後方(蝶口蓋動脈領域)や上方(篩骨動脈領域)からの出血を疑う必要がある。鼻内の診察を行える環境が整っている場合は,出血点の確認のために前鼻鏡や内視鏡検査を行う。
その際,活動性の出血により診察そのものが困難であれば,ボスミンⓇ外用液0.1%(アドレナリン)を5~10倍に希釈した0.01〜0.02%アドレナリン液(アドレナリン原液の5000~1万倍希釈)を添加したガーゼを出血部位に当てて,出血を軽減させてから診察を行う。また,診察や処置を行う前に鼻毛を切っておくと,良好な視野を確保できるだけでなく,内視鏡挿入時のレンズの汚染も防ぐことができる。
出血点を確認できた場合は,その出血点に応じた止血法を検討する。Kiesselbach部位からの出血であれば,まず用手圧迫を試みる。坐位で下を向いた状態で,患者に鼻翼を内側方向へ5分程度圧迫させる。用手圧迫で止血できれば,再出血したときの対処法を指導した上で帰宅させることも可能である。しかし,用手圧迫で止血しなかった場合は,以下に述べるような止血法を試みる。
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